感染性心内膜炎とは心臓の構造的な異常や人工弁などの異物に菌が付着・増殖して菌の塊を形成し心臓の構造を破壊する病気です

菌の塊が血流にのって脳などの遠隔臓器に塞栓などをおこしたりもしますとても恐ろしい病気です

感染性心内膜炎になりやすい危険因子は分かっていて、特に人工弁はハイリスクです

抜歯などの歯科処置や、掻爬疹を伴うほどの皮膚疾患が原因となると言われています

歯根や皮膚から侵入した菌が弁などに菌塊を形成しますのでハイリスクの方はそういう処置の際に予め抗菌剤を内服することも推奨されます

先天性の心疾患や人工弁植え込み手術の既往のある方は抜歯前に主治医に相談されるのが良いと思います

 

先週末はクリニックの忘年会でした

美味しい料理とお酒を頂きながら楽しい、手に汗握るビンゴ大会でした

炎天下に熱中症を心配しながら新クリニックに引越ししたのがつい昨日のことの様で、もう忘年会かと絶句します

新クリニックのプランを具体的に開始したのは2年以上前ですが、今思えばあっという間でした

設備も充実しより一層お役に立てるクリニックになっていると自負しております

来年はさらに設備を拡充しレベルアップを目指しています

 

 

 

 

特に左の腎臓は130mmHgもの圧力がかかり太さ2センチ以上もある大動脈から数センチしか離れていないにも関わらず極めて細い血管にまで分岐し糸球体を形成します

ですので腎臓の中の微小な血管は太さに比べてすごく大きな圧力がかかっておりこれをストレインベッセルと呼びます

構造上血管壁のダメージを受けやすく血流の障害は蛋白尿のない腎機能低下につながります

こういう場合には降圧薬としてアルドステロン受容体拮抗薬の優位性はなく、カルシウム拮抗薬も選択肢になります

こういう状況は腎硬化症と呼ばれますが、全身の他の動脈例えば脳や心臓あるいは眼の血管でも同様のことがおこっている可能性がありますので注意が必要です

 

発作性上室頻拍という名前は一般の方には聞きなれないと思いますが、そんなに稀な不整脈ではありません

心拍は心房の最上位である洞結節から発生した電気信号が心房→房室結節→心室へと伝達され心臓が律動的な収縮をするので、心拍数は洞結節の電気信号の発生頻度によります

運動時や精神的な興奮時には洞結節から発生される電気信号が多くなり心拍数が増加します

その場合には心拍数は徐々に増加し、徐々に減少します

ところがある瞬間に急に心拍数がまるでスイッチを切り替えたかのように早くなることがあり、これを発作性上室頻拍と呼びます

安静にリラックスしているのに急に心拍数が160/分とかに増えますから「ドキドキ」と激しい動悸がします

全力疾走したときのドキドキ感が安静にしているのに急に出現しますから不愉快な感じがします

原因はいくつかあるのですが洞結節からの電気信号が房室結節でグルグルと無限に回る小さな電気回路が形成されてしまう房室結節リエントリー頻拍が最も多い原因です

多くの場合、自然に収まりますから心電図でとらえられることは稀です

しかし最近は携帯する心電計やアップルウォッチが普及し記録されるケースも見られるようになりました

急に心臓が走り出す感じがする場合にはこの発作性上室頻拍かもしれません

 

ところで、ミャクミャクってお尻にも目があるんですね

 

9月28日に堺中央教会杉貴生牧師様のご厚意で新クリニック祝福の会を開催して頂きました

杉牧師様はじめクリスチャンの方々から暖かいお祝いと励ましのお言葉を頂き医療に従事する者として改めて責任の重さを感じました

医療の基本はボランティアだと思っているのですが、クリスチャンの方々の思想は利他的で医療の心に通じるものがあると感じました

最後に記念写真を撮影して頂きましたが、シャッターと同時に自動ドアが閉まり大笑いでした

当日ご参加いただきました皆様本当に有難うございました

 

HFpEFの長期予後を改善する効果を証明された薬は長らくなかったのですが、2021年以降の臨床研究から糖尿病治療薬のSGLT2阻害薬がHFpEFの標準的な治療薬として位置づけられました

しかしながらそれ以外の薬剤は未だに有効性が不明または無効でHFpEFの治療はまだまだこれからの分野です

また今年改定された高血圧のガイドラインでは、HFpEFに対して血圧を130未満にすることが推奨されています

その解説を見ますと

「HFpEFにおける収縮期血圧130未満の血圧管理は、130以上の管理と比して全死因死亡を26%減少させ統計的には優位ではなかったものの抑制傾向が認められた」

と若干歯切れの悪い表現です

個人的意見ですが、これはHFpEFというのが一つの疾患ではなく多くの病態をひっくるめて論じているからではないかと思います

左室収縮能の保たれた心不全、言い換えれば心臓の動きが良いにもかかわらず心不全であるというのはいろんなケースを含みます

最も多く想定されているのが

・左室拡張障害;左心室の収縮は良いが左心室が硬く広がりにくくなっているためにその手前の肺にうっ血がおこっている

だと思うのですが、それ以外に

・頻脈など不整脈によるもの

・弁の機能異常

・脱水

・腎機能低下などによる循環血液量の増加

などたくさんあると思います

ですからHFpEFはまずどのようなメカニズムでおこっているのかをはっきりさせ個々の血行動態に合わせた治療をするのが現状ではベストだと思っています

 

太平洋戦争を指揮したアメリカのフランクリン・ルーズベルト大統領は重症高血圧だったそうです

死去したのが1945年の終戦直前でしたが、当時の血圧は300/だったと記録があります

脳出血でなくなったのですが、どうしてそんな血圧を放置したのでしょう?

理由は二つあります

・当時血圧は高い方が臓器血流が良くなる、すなはち血圧が上昇するのは良い反応だと信じられていた

・有効な降圧剤がなかった

意外なことですが高血圧治療の必要性が認識され、臨床に降圧剤が用いられるようになったのは戦後です

案外歴史の浅い治療なんですね

 

 

日本高血圧学会発行のガイドラインが今年改定されました

以前のものは

「高血圧治療ガイドライン2019」で今回改定されたのは

「高血圧管理・治療ガイドライン2025」

に名前自体が変わりました

そして第1部「国民の血圧管理」では高血圧の予防・啓発活動に従事する方々が利用対象となっており予防医学に重点が置かれています

ですので医師以外の方が読むことを想定されておりネット通販などで購入可能です

ご興味のある方は是非一度ご覧ください

 

慢性腎臓病とは

・糸球体濾過率60以下

・持続する蛋白尿

のいずれかに該当する場合を指します

実は慢性腎臓病という病名は比較的新しく私が研修医の頃はこういう呼び方はしませんでした

腎硬化症、IgA腎症、膜性腎症、巣状糸球体硬化症、膜性増殖性糸球体腎炎や糖尿病性腎症などと主に糸球体の病理診断を元に診断され目標は透析回避でした

しかしその後、こういった糸球体疾患の方々の命を脅かすのは末期腎不全よりむしろ脳卒中や心臓疾患などの方がずっと多いということが統計的に証明され、治療目標は透析回避よりむしろ心血管疾患予防にシフトしました

腎機能低下は一旦始まると自動的にどんどん低下するという性質があります

BrennerのHyper filtration theory (糸球体過剰ろ過仮説)はこの性質をうまく説明しています

腎臓で血液をろ過し尿を作る糸球体は片方の腎臓で約100万個ありますが、腎機能低下とはこの100万個全ての糸球体の機能が少しずつ低下するのではなく機能を失った糸球体がところどころに出現し正常な糸球体の数が減少する状態です

残された糸球体一つ一つには過負荷がかかり、ろ過を多くするために糸球体の出口の動脈を収縮させてろ過する圧を上昇させ全体としてなんとか機能を保ちます

つまり残された正常な糸球体にかなりの負担をかけている状態です

この状況ではさらにいくつかの糸球体が過負荷により機能を失い、正常な糸球体がさらに減っていくという説です

ですので腎機能は低下すればその低下自体がさらなる低下の原因になります

このため糸球体の濾過圧を低下させる降圧剤、主にアンジオテンシン受容体拮抗薬が治療薬として用いられます

本年改定された新しい高血圧治療ガイドラインでは降圧目標が一律に130/80(家庭血圧125/75)未満とされていますが、その目標を達するために選択するべき薬剤はやはりアンジオテンシン受容体拮抗薬です

ただし慢性腎臓病のうちでも有効性が証明されているのは蛋白尿が陽性のもののみです

これは糸球体硬化以外の腎硬化症などが存在し、そういった場合にはむしろ逆効果になる場合があるからです

糖尿病性腎症にはアンジオテンシン受容体拮抗薬が最適とされていますがこれもやはり蛋白尿がある、すなはち糸球体疾患である場合のみです

降圧剤は適応を誤ると、一見血圧は低下していても臓器保護という観点では逆効果になる場合があります

 

 

お陰様で新しいクリニックにも少しずつ慣れて気分一新頑張っています

実はクリニックの二階には細やかな院長室があります

私が事務を執ったり休憩をするためのスペースです

先日、母校の奈良県立医大の後輩の先生たちが新築のお祝いを持って駆けつけてくれその際に二階の院長室を案内しました

私もまだほとんど入ったことのない部屋で片づけも済んでいない状況でしたが、椅子に掛けて冷たいお茶を用意していた時のことです

なんだか二階の隅の方から変な声が聞こえます

よく聞くとトイレの方からです

低い抑揚のない声で不気味な声です

お化けが出たのか?と思って恐る恐るトイレに近づくと中から後輩の先生が

「すみません、トイレットペーパー下さい」

と言っています

その時まだトイレにトイレットペーパーを設置していなかったことに気づき隣のコンビニに急いでトイレットペーパーを買いに行きましたが、なぜか笑ってしまいました

トイレはトイレットペーパーがあってこそのトイレですね