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アーカイブ カテゴリー: 院長ブログ

心臓病の話 8 心アミロイドーシス

院長ブログ

アントニオ猪木が罹患したアミロイドーシスは近年診断・治療ともに大きな進歩を遂げた疾患です

以前は極めてまれな疾患で診断には心臓カテーテルで心筋の生検をして病理検査をすることが必須でしたが、現在では意外なことに骨シンチグラフィーで診断ができます

心アミロイドーシスは高齢者の心臓拡張機能障害や心肥大の方の一部に認められます

心臓以外にもアミロイドが沈着しますので、合併症には手根管症候群や脊柱管狭窄症があります

当院で実施しています心エコーのスペックルトラッキング法では左心室の心尖部だけが収縮能が保たれるというアミロイドーシス特有の現象を検出することが可能です

心臓カテーテル検査を必要としない診断方法が確立され、以前にはなかった治療方法も開発されています

タファミジス・パチシラン・ダラツムマブなど有効性の確認された治療薬も利用が可能です

 

 

 

2026年7月23日

雑談 74 史実

院長ブログ

私が歴史に興味を持つきっかけになったのはNHKの大河ドラマ「国盗り物語」(1973年)です

こんなダイナミックな出来事が本当にあったんだ、と本当にワクワクドキドキでした

その後多くの歴史書を読み今でも戦国時代や太平洋戦争などに関する書物は多く手に取りますが当然の流れとして脚色されたドラマではなく実際に起こった「史実」に興味が向きます

そしてある程度の史実を知るとドラマの行き過ぎた脚色を疑問に感じます

多くの小説や映画などでは本能寺の変を明智光秀による織田信長に対する怨恨としていますが、そうではないというのが歴史研究者での一致した考えで、そもそも多くの映画やドラマで描かれているような織田信長による明智光秀に対する暴行はなかったとするのが史実のようです

織田信長には多くの家臣がいましたが明智光秀は他の武将とは一線を画す別格的なエース級の人材だった様です

羽柴秀吉・柴田勝家・丹羽長秀などの有力武将が中国・北陸・四国といった各地方戦線の指揮官に過ぎなかったのに比べて、明智光秀は京都の治安維持・将軍や天皇家との折衝や行政・丹波地方の平定や劣勢に立たされた各地方戦線への応援部隊といった軍指揮官に加えて織田信長から畿内の諸大名を指揮下に置く権限まで与えられていました

いくつかの書状でも織田信長は明智光秀の働きを絶賛しており佐久間信盛を無能として追放した際にも明智光秀の働きを引き合いに出しているくらいです

実際、石山本願寺との天王寺の戦いで砦を守る明智光秀から「このままではあと三日持たない」と報告を受けた織田信長が自らの手勢で援軍に駆け付け最前線で敵の鉄砲に被弾し怪我を負いながらも命がけで明智光秀を救出したのは有名な話ですし、この危機を招いた塙直政を死後も激しく糾弾したことは史実です

ではそんな明智光秀がなぜ謀反を起こしたのでしょうか?

タイムマシンに乗って本能寺の変の直前の明智光秀に会ってその胸中を聞いてみたいと考えたりもします

もちろんそんなことは不可能ですが、当時の彼の胸中を察することこそが歴史ロマンだと感じます

 

 

 

 

 

2026年7月9日

高血圧の話 78 Oncohypertension

院長ブログ

循環器内科では悪性腫瘍を扱うことは極めてまれですので以前は抗がん剤などの知識は重要ではありませんでした

しかしながら分子標的薬が汎用され特に免疫チェックポイント阻害薬が実用化されてからはirAE(免疫関連有害事象)は循環器内科にも無縁ではなくなりました

特にirAE心筋炎は治療が遅れると致死的な転機をとりうる副作用として知られています

VEGF(血管内皮細胞増殖因子)は30年以上前から血管を新しく作る因子として注目され閉塞性動脈硬化症などの治療に応用されていましたが、副作用としてもし癌が体内に潜んでいた場合にはその癌を急激に増大させることも知られていました

現在ではそのVEGFに対するモノクローナル抗体などが抗VEGF抗体が抗がん剤として用いられていますが、副作用として高血圧があります

降圧にはアンジオテンシン変換酵素阻害薬またはカルシウム拮抗薬が用いられますが、抗VEGF薬の休薬後は血圧も低下することが多くいずれは降圧剤の中止が可能です

ただし、薬剤によって血圧が下がるまでの期間が大きく違っており慎重な経過観察が必要です

 

 

2026年7月2日

不整脈の話 30 ブルガダ心電図と心房細動

院長ブログ

朝、家族に死亡しているのを発見される突然死を呈する病気は日本では「ぽっくり病」として知られており欧米でも”Pokkuri Disease”と呼ばれていました

今日では心筋細胞膜のナトリウムイオンを通す穴(ナトリウムチャネル)の異常であることが判明しており普段から特有の心電図波形を呈するブルガダ症候群と呼ばれています

この特有の心電図はブルガダ心電図と呼ばれタイプ1~3の3種類があり、ブルガダ症候群と診断されるのはタイプ1だけです

ただし、厄介なのはこのブルガダ心電図はその時により出現したり消えたりします

特にタイプ2と3は心電図の電極の位置を変えたりある種の抗不整脈薬を投与するとタイプ1に変化することもあります

薬物(例えばピルジカイニド)を投与し心電図の変化を見る薬物負荷試験もあるのですが、薬物投与によってタイプ1になるケースでは元々タイプ1である例ほど重篤な不整脈も少ないのと薬物負荷そのものにリスクがあるのとで一般的には行われません

実はこのピルジカイニドは実際の臨床の場では汎用される薬で期外収縮や心房細動の際に用いられることは稀ではありません

例えば動悸の酷い心房細動の方にはしばしば投与されますが、投与後に心電図波形が変わってタイプ1のブルガダ心電図が出現するケースもありうります

こういう場合にはすぐに休薬して精査ということになります

ですので投与前の心電図がブルガダ心電図でなくても「以前健診などでブルガダ心電図を指摘されたことがある」という方は必ず医師に申し出る必要があります

 

2026年6月25日

心臓病の話 7 特発性拡張型心筋症

院長ブログ

特発性拡張型心筋症とは原因不詳の拡張型心筋症と解釈され、時々「掃きだめ診断」と揶揄されることもあります

冠動脈も正常だし、薬剤性でも頻脈誘発性でもないし心筋炎でもないし結局特発性と診断されるケースが多いように思います

ですので厳密にいうともう少し詳しい病名がつくケースもありうります

タイチン関連心筋症・ラミン心筋症・RBM20関連心筋症・筋ジストロフィー・ファブリー病などは遺伝子疾患で症状は拡張型心筋症です

いくつかの遺伝子診断は大学病院や循環器病センターで実施可能ですが、それが直接治療に結びつかないのが現状です

遠くない将来、循環器の世界でも遺伝子治療が可能な時代が来ると信じていますがまだ時間がかかりそうですね

結局拡張型心筋症の治療は心不全治療ということになるのが現状です

 

ところで、サッカーワールドカップ北米大会がいよいよです

前回のカタール大会では日本はグループリーグでスペイン・ドイツに連勝し一位通過して驚きました

決勝トーナメント一回戦でクロアチアにフルタイムドローの末PK戦で敗退しましたが、PKを外して控室で泣き崩れる三苫薫選手を抱きしめる森保監督の姿に日本中が涙でしたね

今回はどんな感動を与えてくれるのでしょうか?

 

2026年6月11日

雑談 73 堺市地域医療情報ネットワークシステム

院長ブログ

現在堺市では開業医が地域の病院の診療録や検査データあるいはX線やCT・MRIといった情報をネット上で閲覧できるシステムがあります

堺市地域医療情報ネットワークシステムと呼ばれるもので堺市立総合医療センターに事務局があります

患者様から口頭で同意を頂けましたら事務局宛にFAXで申請をし二日程でその患者様のデータが閲覧が可能になります

当院で既に多くの方がご利用いただいておりますが、病院での検査結果が閲覧できますので当院での検査を省略することも可能になります

単に便利なだけでなく身体的・経済的な負担も削減できますのでぜひ積極的に活用したいと考えております

利用可能な病院など情報は

https://www.sakai-hospital.jp/ict/list/

で閲覧できます

もちろん利用は無料です

ご希望の方は当院スタッフまで口頭でお伝え頂けましたら手続きをさせて致します

 

 

2026年6月4日

心臓病の話 6 運動負荷試験

院長ブログ

オリンピックの表彰台のような階段を昇降して心電図を記録する運動負荷心電図は以前よりずっと出番が減りました

冠動脈CTや運動負荷心筋シンチより感度が落ちるのが一因ですが、他に冠動脈CTが普及したのも大きな要因だと思います

しかし運動しながら心電図を記録すると同時に酸素摂取量や二酸化炭素排出量を同時測定する心配運動負荷試験は今日でも心不全の予後予測因子として極めて有用です

一定の運動時のみに発作が起きる安定労作時狭心症でしたら生命の危機は少ないのですが、急性冠症候群を発症するとそうではありませんので予防することが大切です

そしてそのために最も重要な因子はLDLコレステロールです

安定労作時狭心症に対してはカテーテル治療と同等の効果があります

どの程度までさせることが必要かはその人により違います

一般に公開されている動脈硬化性疾患予防ガイドライン

の71ページが参考になると思います

是非一度ご覧ください

 

2026年5月28日

雑談 72 AIと歴史

院長ブログ

歴史上の出来事についてAIに尋ねるとネット上の情報を一瞬のうちに検索し答えてくれます

しかもかなりの精度で複数の説を紹介してくれたりもします

次々に質問してもすべての質問に詳しく答えてくれますからまるで歴史学者と話をしているようです

歴史に「もし」は意味がないという方もいますが、私はもしを考えることこそ歴史を学ぶ醍醐味で自分だったらどうしただろうと考えることが歴史を未来に生かすことだと思います

歴史小説などは事実を脚色していますから正確な史実を知りたい場合にはAIはとても有用です

織田信長が武田勝頼に大勝した長篠の戦では「織田信長の3000丁の鉄砲の三段撃ち」が有名ですがこれは事実ではないようです

長篠の古戦場で地面を掘り起こし地中の鉄砲玉を回収し鉛の成分を分析しどこの鉛鉱山で採掘された鉛かを調べた歴史マニアがいます

多くは東南アジアの鉛鉱山由来で一部国内産でさらに一部は青銅や鉄だったそうです

最大の貿易港堺を掌握し武田領を経済封鎖していた織田方には豊富な鉛があり数十万発と言われる射撃をしたそうですが、一方武田群には十分な鉛がなく寺の鐘を溶かして青銅で鉄砲の玉を作ることまでした記録があります

もちろん青銅は鉛より重く遠くまで届かなかったでしょう

最強の野戦軍と言われる武田騎馬軍団に対して、三重の馬防柵を設置し十分な弾薬を準備しひたすら防御の陣形を敷いた織田信長は後日「武田軍が攻めてこなかったら自分にできることは何もなかった」と語っています

武田勝頼にあの無謀な突撃をさせたものは何だったのでしょうか?

この質問にはAIもお手上げの様です

 

 

 

 

2026年5月21日

高血圧の話 77 褐色細胞腫

院長ブログ

交感神経は名前の通り神経であり、電気信号で刺激を伝達しますが効果を発揮する臓器の直前では神経伝達物質という化学物質で刺激を伝えます

その神経伝達物質は交感神経の場合はノルアドレナリンでこれがたくさん放出されると臓器の受容体と結合し交感神経緊張が高まり血圧が上昇します

ところで、交感神経受容体にはα受容体とβ受容体があり両者とも昇圧効果を発揮し、逆に遮断すると血圧は低下します

ですがこの両者には効果の種類にに若干の差があり、特に血圧調節には顕著な差があります

α受容体はは血管を収縮させることで血圧を上昇させます

β受容体は逆に血管を軽度拡張しますが、その一方腎臓からのレニン分泌を促進し心拍数や心拍出量を増やすことから血圧を上昇させます

結局両者とも刺激を受けると血圧を上昇させ、受容体を遮断されると血圧は低下します

ところで、ノルアドレナリン以外にも類似した効果を発揮する物質は存在しカテコラミンと総称され、代表的なものにアドレナリンがあります

アドレナリンは交感神経終末の局所で作用を発揮する神経伝達物質ではなく、副腎から血中に放出され全身を流れるホルモンのような物質で作用はノルアドレナリンとほぼ同様です

ある種の副腎の腫瘍でこのカテコラミンがたくさん分泌されると血圧が上昇し、褐色細胞腫と呼ばれます

高血圧の一部にはこの褐色細胞腫が混じっており注意が必要です

交感神経緊張による血圧上昇なので動悸を伴います

動悸を伴う高血圧なのでβ遮断薬が最適と考えられがちですが、実はこの場合β遮断薬は禁忌です

β遮断薬を単独で投与すると行き場を失ったカテコラミンがα受容体に殺到しunopposede α stimulation と呼ばれる高度のα受容体刺激が起こり血圧は急上昇します

褐色細胞腫の場合にはまずα受容体遮断から開始することが必須で治療を間違うとアクシデントの原因になります

 

 

 

 

 

2026年5月6日

心不全の話 32 NT-ProBNP

院長ブログ

私が研修医の頃に循環器領域で研究対象として最も注目を集めていたのはANP(心房性ナトリウムポリペプチド)とエンドセリンでした

どちらも発見されたばかりで学会の度に多くの論文が発表されていました

当時は心臓は血液を送り出す単なるポンプであり、心臓がホルモンを分泌するというのがとても目新しく注目を集めていました

今日、心不全治療薬として市販されていますが、ANPに次いで脳が心不全に対するホルモンを分泌することが発見されBNP(脳性ナトリウムポリペプチド)と呼ばれました

その後の研究で脳よりむしろ心房から分泌されることが分かっています

ポリペプチドですが、心房からBNPの前駆体ProBNPが分泌されN末端が外れて血中に活性体として存在するので(アミノ酸にN末端とT末端があることは高校の科学で習いましたよね)血中のN末端すなはちProBNPのN末端(NT-ProBNP)はBNPと同じモル数が存在するわけでBNPを測定する代用としてNT-ProBNP濃度が心不全の指標として広く用いられるようになっています

2026年4月23日
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