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アーカイブ カテゴリー: 院長ブログ

高血圧の話 82 高血圧と心肥大

院長ブログ

高血圧治療を受けている方で心肥大を指摘された方も珍しくないと思います

心肥大とは左心室の壁が厚くなることを言います

高血圧に逆らって血液を全身に送り出す筋トレを毎日繰り返していると左心室の筋肉がムキムキになってくる、と言うとイメージとしてわかりやすいと思います

実はこの心肥大は心不全の原因となるばかりか他の心血管イベントの発生も増加します

いったん発症した心肥大は治るのでしょうか?

大きな臨床研究のデータによると

・収縮期血圧を130以下にコントロールすると心肥大に合併する脳心血管イベントを心肥大でない場合と同様のレベルまで低下させることができる

・収縮期血圧を120以下にコントロールすると心肥大を退縮させることができる

ことがわかっています

降圧薬による差もあり

心肥大退縮は特にレニンアンジオテンシン系阻害薬とカルシウム拮抗薬で退縮効果が強いことが分かっています

 

2026年10月29日

心不全の話 34 左室駆出分画の保たれた心不全

院長ブログ

左室駆出分画とは左心室の収縮能の指標で、どれだけ左心室が元気に動いているかを示します

現在の心不全の約半分がこの左室駆出分画が正常にも関わらず心不全を起こしているとされています

左心室という最も大きなポンプが正常に稼働しているにもかかわらず心不全って?

と、なんとなくイメージが湧きにくいと思います

現在HFpEF(左室駆出分画の保たれた心不全)と呼ばれるものは単一の疾患ではありません

分かりやすく言えば「左室駆出分画の低下した心不全」以外の心不全全部です

ですので原因は多岐に渡りますが最も多いのは左室拡張機能障害です

心肥大などで左心室の壁が肥厚した場合には壁が厚くなった分左心室が広がりにくくなり、左心室の手前すなわち肺で血液が渋滞をおこす、言い換えれば肺うっ血をおこしている状態です

それ以外にも頻脈性心房細動・構造心疾患・弁膜症などがあります

共通して有効性が示された薬剤は実は糖尿病治療薬として開発されたSGLT2のみです

この場合の有用性とは長期予後を改善させるという意味で、現在の症状を緩和するというのとは別問題です

この多岐に渡る疾患群に対する治療薬を一概に評価するのは無理があると思うのですが

2026年10月22日

心不全の話 33 β遮断薬と気管支喘息

院長ブログ

私が執筆を一部担当した書籍「高血圧診療の勘所」が明日発売になります

44名の医師の共同執筆で私が担当しましたのは「β遮断薬と気管支喘息」です

医療従事者向けの本で値段も6,600円と高額ですので一般の方に購入をお勧めするものではないのですが、興味をお持ちの方にわたしが担当した章の概略を紹介いたします

『高血圧治療に用いられるβ遮断薬は気管支収縮作用があることから気管支喘息には禁忌と考えられてきました

しかしβ遮断薬は降圧薬以外に心不全治療薬としても用いられ、その効果は他の薬剤には置き換えられないもので心不全治療薬としては外せないものです

気管支喘息といえども心臓選択性の高いものを慎重に使用すれば安全に用いることが可能です』

上記の内容をエビデンスを交えながら解説したものです

近年は医師の研究は発売後の薬剤の効能を疫学調査するというものばかりになって実験室から生まれる論文は減りました

ですので「どの薬をどういう状況でどのように使えばよいのか」という話ばかりで「なぜその治療が奏功するのか」という議論には出会わなくなりました

β遮断薬がなぜ心不全の予後を改善するのかという疑問に対する現在の知見は十分とは言えないと思います

β遮断薬はアドレナリンやノルアドレナリンといったカテコラミンのの作用をブロックします

ではなぜカテコラミンの作用をブロックすると心不全の予後を改善するのでしょう?

一つ勘違いしてはならないのは現在の心不全がβ遮断薬によって症状改善するのではなく、長期間内服を続けると経過がよくなるということです

心不全になると心筋の収縮力を強めようと副腎からアドレナリンが放出されます

このアドレナリンが心筋障害作用があるということがわかっています

またアドレナリンは不整脈の発生閾値を低下させ致死的不整脈が出やすくなります

これらの作用をブロックすることが心不全の長期予後を改善するのではないかと思います

もちろん交感神経の活性を遮断しますから性急に多量を投与すれば心不全は悪化します

ですのでβ遮断薬の処方は

・心不全の状態が良いときに

・出来るだけ少量から開始し

・できるだけ少しずつ増量し

・できるだけ最大量まで増量する

が基本です

 

 

2026年10月15日

雑談 76 高血圧診療の勘所

院長ブログ

ご縁があって本の一部を執筆担当しました

中外医学社発刊の「高血圧診療の勘所」です

私が担当したのは「β遮断薬と気管支喘息」です

発刊は10月13日ですが、アマゾンでは10月16日から購入できるそうです

ご興味のある方はぜひご一読ください

 

2026年10月1日

心臓病の話 10 構造心疾患

院長ブログ

最近構造心疾患(SHD)という言葉を聞く機会が増えました

構造心疾患とは弁や心筋の異常、あるいは先天心奇形などのように心臓の構造異常によって心機能に支障をきたす病気の総称です

最近この言葉を聞く機会が増えた理由はひとえにカテーテル治療の進歩です

従来なら心臓外科で人工心肺下に開胸の大手術を行わなければならなかった疾患の多くがデバイスの進歩によりカテーテル治療が可能になりました

特に顕著な進歩を遂げたのが

・大動脈弁狭窄症に対するTAVI(経カテーテル大動脈弁置換術)です

大動脈弁狭窄は他の僧帽弁疾患などと違って初めての心不全で致死的経過を辿ることのある恐ろしい病気です

しかし最近では心臓超音波検査で特にドップラー検査を用いると重症度まで比較的簡単に診断ができますし、開胸せずにカテーテル治療で根治可能です

他にも心房中隔欠損症・僧帽弁狭窄症・僧帽弁閉鎖不全症・肺動脈弁狭窄症・三尖弁閉鎖不全症などがカテーテル治療可能となっています

さらに大動脈瘤もカテーテル治療が広く行われるようになっています

心疾患は形態異常であるケースが多くこのような新しいデバイスの登場により治療法が大きく変化しています

完全植え込み型人工心臓も単なるSFの話ではなくなるかもしれないと最近感じます

 

 

2026年9月24日

心臓病の話 9 冠攣縮性狭心症

院長ブログ

一般に狭心症は心筋に血液を供給する冠動脈が動脈硬化により狭窄することが原因です

労作時のみに発作が起こり、発作を引き起こす労作の量や頻度が一定の場合には安定労作性狭心症と呼ばれ、冠動脈形成術とスタチン剤による治療の間で予後に差はないとされてい

一方、労作によらず睡眠時などの安静時に発作が起こり心電図変化が一般の狭心症と違いST部分の上昇がみられるものを冠攣縮性狭心症と呼びます

原因は冠動脈の血管壁のけいれんのようなもので血管には狭窄はありませんが一時的な冠動脈の血流の障害がみられます

1959年にPrinzmetalにより初めて”Variant form of angina pectoris”という論文で報告されたことから異型狭心症と呼ばれましたがこの論文では既にカルシウム拮抗薬が著効することも報告されています

そして今日に至るまでこのカルシウム拮抗薬が冠攣縮性狭心症治療の基本とされています

β遮断薬は基本的に禁忌で発作を誘発する可能性があります

 

2026年9月17日

雑談 75 医療とAI

院長ブログ

当院で採用している電子カルテは最近AIが搭載されました

私と患者様との会話を聞いた電子カルテがその用件だけを要約してカルテに記載します

検査値の異常や次回受診時の注意点を教えてくれますし、外国語の診断書も一瞬です

しかし何より私が驚いたのは、先日脳梗塞を心配して受診された方を診察したときのことです

私が

「手のひらを上に向けて両手を前にぴんと伸ばして目を閉じてください・・・・大丈夫ですね」

と言ったら電子カルテに

「バレー兆候:陰性」

と記載されたことです

医師しか知らないであろう内科診断学の知識をAIが理解していたことには本当に驚きました

医師が失業する日も近いかもしれません

 

2026年9月10日

高血圧の話 81 原発性アルドステロン症の頻度

院長ブログ

原発性アルドステロン症とは副腎から昇圧物質であるアルドステロンが無秩序に分泌されて高血圧を呈する病気です

以前は比較的稀な疾患と考えられていましたが最近の統計では

・全高血圧患者の5~10パーセント

・降圧薬を複数内服しても下がりにくい難治性高血圧の15~20パーセント

・若年性高血圧ではさらに高頻度

が原発性アルドステロン症であると言われています

アルドステロンの臓器障害作用は強く、同じ高血圧でも原発性アルドステロン症は本態性高血圧症に比べて

脳卒中の発生率が4.2倍

心筋梗塞の発生率が6.5倍

高いことが分かっています

特に若年性の脳卒中が多いので注意が必要です

副腎腫瘍が原因のことが多いのですが悪性であることは稀で基本的には内服薬治療が採用されます

ただし本態性高血圧とは用いる薬剤に違いがあるので注意が必要です

 

2026年8月27日

高血圧の話 80 高血圧のchronotherapy

院長ブログ

最近の降圧薬の多くは一日一回の服用で24時間以上降圧効果が持続し血圧を安定させることを目指して作られています

しかし体内の血圧をコントロールする物質例えばレニンやアルドステロンの分泌は日内変動があり、また睡眠時間や気温あるいは食事や飲酒などのライフスタイルによっても血圧は変動しますので、一日のうちでもどの時間帯に血圧が上昇しやすいかは個人差があります

そこで血圧の上昇しやすい時間帯をターゲットとして降圧薬を内服する時間帯を変更するのがchronotherapyです

早朝に血圧の高い方は夜に降圧薬を内服するといった具合にです

もちろんこの手法により血圧の日内変動は抑えられますが、これが脳血管疾患などを抑制するのかについてはい未だ十分なエビデンスはありません

今後の研究の結果を待っているというのが現状です

 

 

 

 

 

2026年8月20日

高血圧の話 79 心肥大と心拡大

院長ブログ

心肥大は心室特に左心室の壁が厚く肥厚することです

心拡大は風船が膨らむように内腔が広く拡張することです

胸部X線を見て「心肥大」は診断できませんが「心拡大」は推定できます

正確にいうと「心陰影の拡大」と表現します

「心陰影の拡大」には「心拡大」と心臓の周囲に水がたまる「心嚢液貯留」があります

心拡大はすなわち心不全を意味しますが、長期の心拡大は心室壁張力の上昇に対抗すためるに心肥大が伴います

心肥大の原因で多いのが高血圧です

長期間高度の高血圧を放置すると心肥大がおこり心室壁はしなやかさを失い拡張しにくくなり心不全の原因になります

降圧治療により収縮期血圧を130以下にすると心肥大の合併症を減らすことができ、120以下にすると肥大した心筋は退縮します

この効果はどの降圧薬でも認められますが、特にアルドステロン受容体拮抗薬とカルシウム拮抗薬で強い効果が認められています

これらにミネラルコルチコイド受容体拮抗薬を追加すると退縮効果が強くなります

 

 

2026年7月30日
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