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発作性上室頻拍という名前は一般の方には聞きなれないと思いますが、そんなに稀な不整脈ではありません

心拍は心房の最上位である洞結節から発生した電気信号が心房→房室結節→心室へと伝達され心臓が律動的な収縮をするので、心拍数は洞結節の電気信号の発生頻度によります

運動時や精神的な興奮時には洞結節から発生される電気信号が多くなり心拍数が増加します

その場合には心拍数は徐々に増加し、徐々に減少します

ところがある瞬間に急に心拍数がまるでスイッチを切り替えたかのように早くなることがあり、これを発作性上室頻拍と呼びます

安静にリラックスしているのに急に心拍数が160/分とかに増えますから「ドキドキ」と激しい動悸がします

全力疾走したときのドキドキ感が安静にしているのに急に出現しますから不愉快な感じがします

原因はいくつかあるのですが洞結節からの電気信号が房室結節でグルグルと無限に回る小さな電気回路が形成されてしまう房室結節リエントリー頻拍が最も多い原因です

多くの場合、自然に収まりますから心電図でとらえられることは稀です

しかし最近は携帯する心電計やアップルウォッチが普及し記録されるケースも見られるようになりました

急に心臓が走り出す感じがする場合にはこの発作性上室頻拍かもしれません

 

ところで、ミャクミャクってお尻にも目があるんですね

 

HFpEFの長期予後を改善する効果を証明された薬は長らくなかったのですが、2021年以降の臨床研究から糖尿病治療薬のSGLT2阻害薬がHFpEFの標準的な治療薬として位置づけられました

しかしながらそれ以外の薬剤は未だに有効性が不明または無効でHFpEFの治療はまだまだこれからの分野です

また今年改定された高血圧のガイドラインでは、HFpEFに対して血圧を130未満にすることが推奨されています

その解説を見ますと

「HFpEFにおける収縮期血圧130未満の血圧管理は、130以上の管理と比して全死因死亡を26%減少させ統計的には優位ではなかったものの抑制傾向が認められた」

と若干歯切れの悪い表現です

個人的意見ですが、これはHFpEFというのが一つの疾患ではなく多くの病態をひっくるめて論じているからではないかと思います

左室収縮能の保たれた心不全、言い換えれば心臓の動きが良いにもかかわらず心不全であるというのはいろんなケースを含みます

最も多く想定されているのが

・左室拡張障害;左心室の収縮は良いが左心室が硬く広がりにくくなっているためにその手前の肺にうっ血がおこっている

だと思うのですが、それ以外に

・頻脈など不整脈によるもの

・弁の機能異常

・脱水

・腎機能低下などによる循環血液量の増加

などたくさんあると思います

ですからHFpEFはまずどのようなメカニズムでおこっているのかをはっきりさせ個々の血行動態に合わせた治療をするのが現状ではベストだと思っています

 

心室細動や心室頻拍は致死的不整脈で一度の発作で命を落とすことがあります

この致死的不整脈はいろんな状況でおこりうるのですが心不全に合併するものも稀ではありません

重症心不全の方の死因は心不全による(心臓が生きていくのに必要な血液を供給できなくなった場合)死亡と不整脈による突然死があります

今まではこういった致死的不整脈を治療するための植込み型除細動器(ICD)は「心室頻拍や心室細動からの蘇生後」が適応とされていましたが、それはラッキーにも蘇生に成功した方が対象で蘇生できなかった方への言及がありません

言い換えれば初めての致死的不整脈で命を落とす方への対策がない、ということになります

今年改定された心不全治療ガイドラインでは「心不全患者におけるICDの突然死一次予防」について言及されています

それによると「ガイドラインにのっとった適切な心不全治療が3月以上実施されているにもかかわらず、一定以上の心不全があり左室駆出分画35%以下の虚血性心不全患者」に予防的ICD植え込みが推奨されています

予防的ICD植込みは一度の発作で命を落としかねない致死的不整脈の予防ですから、勧められた方はその必要性が実感しにくいかもしれません

しかし今後予防的ICD]植込みは増えると思います

 

心房性ナトリウム利尿ペプチドが日本人によって発見されたのが1983年で、私が大学を卒業した1987年ごろは循環器関連学会の発表演題の多くがナトリウム利尿ペプチドに関するものでした

当時は心臓は単なる筋肉の塊と信じられており、心臓からホルモンが分泌されるという発見が驚きをもって迎えられました

心房筋への圧負荷が高まると分泌され、強力な利尿作用で循環血液量を減らしますので現在では薬品として精製され心不全治療薬「ハンプ」として臨床応用されています

その後、心室からも同様に利尿作用のあるホルモンBNPを分泌されることが発見され、これは現在心不全の診断の指標として用いられます

BNPは心室筋から分泌され、心不全以外に心肥大やある種の不整脈でも増加します

ところで、ANPは心房筋から分離精製されたためANP(Atrial natriuretic polypeptide:心房性ナトリウム利尿ぺプチド)と呼ばれますがBNPは最初豚の脳から分離精製されたためBNP(Brain natriuretic polypeptide:脳性ナトリウム利尿ペプチド)と呼ばれます。

しかし現在では人間においては主に心室筋から分泌されることが分かっています

BNPの前駆体であるPro-BNPが心室筋から分泌され直後にN末端(タンパク質やポリペプチドにはN末端とC末端があることは高校の生物で習いましたね)とBNPに分かれることからNTーProBNP(ProBNPから分離したN末端部分)はBNPと同じモル数が存在することも知られており、

血中のBNP濃度を反映することから血中BNP濃度の代用としてNT-ProBNPは測定されます

発作性心房細動のある方が、ある時心不全でもないのに急にNT-ProBNPが上昇した場合にはごく最近の心房細動発作を疑う根拠になります

また腎機能低下や加齢、心肥大などでも上昇しますし、意外なことに脱水状態でも高値を示す場合があります

 

 

 

 

 

健診でブルガダ心電図と診断され受診をすすめられるケースが少なからず見られます

ブルガダ症候群は昔日本で「ぽっくり病」と呼ばれた突然死をする不整脈疾患です

働き盛りの男性が何前触れもなく心室細動を起こし突然死する遺伝子病で、生前からある特徴のある心電図を呈することが知られておりブルガダ心電図と呼ばれます

ただブルガダ心電図には3タイプがありタイプ1はブルガダ症候群である可能性が大きいのですがタイプ2あるいはタイプ3ではブルガダ症候群であることは稀です

ただし、タイプ2でも発熱時やある種の抗不整脈薬内服後にタイプ1に変化するケースもあるので注意が必要です

健診でブルガダ心電図と診断された場合にはまずタイプ1なのかどうかが大切で、その他に失神発作の経歴や突然死の家族歴も参考になります

ブルガダ心電図と診断された方が全てブルガダ症候群ではありませんので混同されませんようにお願いします

 

不整脈や狭心症を検出するのに有用なのがホルター心電図です

動悸や胸痛を自覚しても病院に到着するころには症状そのものが治まってしまって心電図を記録しても診断がつかないことが多いのが実情です

ホルター心電図は胸部に張り付けるだけで24時間以上の心電図を記録できますから、数分程度で収まる動悸や胸痛などの心臓発作を検出するのに優れています

当院では24時間装着の従来型のホルター心電図以外に、2週間連続装着可能なものあるいはバンドエイド程度の大きさで1週間装着できる小型のハートノートの3種類のホルター心電図に加え

自覚症状があるときにポケットから取り出して自身でスマホを用いて記録する携帯型心電図を用意しております

それぞれにそれぞれの長所と短所があり使い分けます

 

全国でApple Watch 外来を実施する医療機関が増えていますね

Apple Watch は不整脈を検知する機能を備えておりその診断は古典的なルールドAIではなく8層のディープラーニングAIが担当しているそうです

同社によりますと心房細動検出の感度(心房細動を心房細動と診断する確率)は98%、特異度(心房細動でないものを心房細動でないと診断する確率)は90%です

academyinfo20210129

ですのでApple Watch の診断は医師が確認する必要があります

iphone からPDFファイルとして保存する

Apple Watch の画面をスクリーンショットする

のいずれかの画像をご提示頂ければ参考になります

この場合、当院を受診し対面診察をお受け頂く以外にも、オンライン診療でPDFまたは画像を添付頂けましたら対応可能です。

ぜひご活用ください。

心臓は筋肉でできた筒のような構造をしていて拡張と収縮を繰り返し血液を送り出すポンプの役割をしています。

心筋は拡張時に大きく引き伸ばされればそれだけ強い力で収縮するという性質があり、スターリングの法則と呼ばれます。

長い拡張期に大きく拡張した心臓はそれだけ強い力で多くの血液を送り出すというわけです。

下の心電図の上向きの鋭く大きい波形は心室の収縮を意味し、その間は拡張期です。

拡張期は長く収縮期はほんの一瞬ですね。

はじめの4心拍までは正常なのですが、5心拍目に拡張期の短い期外収縮という不整脈が出ています。

例えば、初めの4心拍までは収縮期血圧120で一回の心拍出量が80mlとしましょう。

5心拍目の期外収縮は拡張期が短いので心室への流入血液量も少なく拍出する力も弱くなります。

収縮期血圧は80で一回の拍出量は40ml程度でしょう。

ちょうど「脈がとぶ」感じがする(脈拍結滞)はずです。

その後の5心拍目は通常の心拍なのですが、不整脈の後で拡張期が長く多くの血液が心臓に流入しより強い力で心臓は収縮します。

収縮期血圧は200くらいで一回の拍出量は120mlていどでしょう。

かなり強い「ドキン」とする動悸を感じると思います。

不整脈の場合、この5心拍目の期外収縮を動悸を感じると誤解されがちですが実際に動機として自覚するのはその後の6拍目の正常心拍です。

 

 

動悸などを自覚し循環器内科を受診する方のうち治療を必要とする不整脈がみられるのは多いものではありません。

しかし一方で不整脈による突然死があるのも事実で、多くが心室頻拍や心室細動です。

これらは大きく分けて

・遺伝性不整脈疾患:心筋のイオンチャネルの異常により不整脈が起こる

ブルガダ症候群

遺伝性QT延長群

カテコラミン誘発性多型制心室頻拍

などがあり、さらに

・器質的心疾患

心筋症

虚血性心疾患

弁膜疾患

高血圧性心疾患

などの器質的心疾患によるものがあります。

不整脈による突然死を事前に予知するのは簡単なことではなく、心臓電気生理学的検査や遺伝子検査がありますがどういった場合にこれらの検査をするのかについても判断が難しい場合があります。

一般的には

めまいや眼前暗黒感などの脳貧血症状を伴う場合は要注意で、そういう症状のある場合は急いで検査をすることが進められます。

当院では

24時間

1週間

2週間

装着できる3種類のホルター心電図を実施しております。

上記の症状のある場合は早めに受診してください。

 

 

この3月に改訂された日本循環器学会2024年版不整脈治療ガイドラインでは心房細動による脳梗塞発症において、低体重(BMI18.5未満)が危険因子として認定されています。

低体重心房細動患者では、全死亡と心血管死の発生率が高かったそうです。

ですから、この基準に該当する人では抗凝固療法を実施する意義が高くとりわけDOAC(直接経口抗凝固薬)がワーファリンに比して有効性・危険性とも優れていることが示されています。

ここで誤解してはならないのは、体重を増やせば死亡率も心血管死も発生率が下がるわけではないということです。

それに関しては介入試験を実施しないと分かりません。