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診察室で測定した血圧は高くないにも関わらず自宅などで測定した場合に高血圧の基準を満たす場合には仮面高血圧と言い、

早朝高血圧

昼間高血圧

夜間高血圧

があります。

高血圧の基準は診察室では140/90ですが、自宅で測定する場合は135/85です。

ただし、夜間高血圧の場合には独自の基準があり120/70です。

厳密には24時間血圧計を用いて測定した平均値から判断するのですが家庭血圧計で代用することも可能です。

夜間高血圧も脳血管疾患や認知機能低下の原因となることが分かっています。

 

仮面高血圧には昼間高血圧も含まれます。

身体活動の多い時間帯で、職場や家庭での精神的ストレスや身体的ストレスが原因でストレス下高血圧とも呼ばれます。

特に肥満の方に多く生活習慣の改善や適性体重の維持が必要です。

これも他の仮面血圧と同様診察室外血圧が診断基準なので、基準は135/85が高血圧の基準となります。

 

 

仮面高血圧とは診察室では高血圧ではなくても、それ以外の状況では高血圧を呈する場合を指し

①早朝高血圧

②昼間高血圧

③夜間高血圧

があります。

早朝高血圧の原因として

飲酒・喫煙

寒冷

血管の硬化

短時間作用型の降圧剤の不適切な処方

等があります。

冬場は特に朝の血圧が上昇します。

十分な睡眠をとり部屋を暖かくし、トイレも暖かくして下さい。

 

グリチルリチンはある種の漢方薬や健康補助食品に含まれますが、内因性のコルチゾール(ステロイドホルモン)の効果を増強し血圧を上昇させます。

グリチルリチンの摂取量・接種期間に比例し高血圧が発症しやすくなります。

特に60歳以上の方は危険と言われています。

コルチゾールはナトリウムを貯留するのと同時にカリウムを排泄しますので、多くの場合低カリウム血漿をきたします。

こういう場合は該当する健康補助食品を中止してもすぐには血圧は低下せず、血圧の正常化には数週間~数か月を要します。

健康補助食品による高血圧は案外盲点です。

健康補助食品を常用されている方はお気を付けください。

 

 

寒い冬の朝に脳卒中が多いことは以前から知られています。

寒い冬の朝、特に暖房の入っていないトイレで急に血圧が上昇し脳卒中を発症することは稀ではありません。

寒い冬は一晩中でも暖房を入れること、または早朝にタイマーで暖房を入れることは急激な血圧上昇を予防するのに効果的です。

しかしトイレにまで暖房を設備している家は稀でしょうから、冬の朝にはトイレに注意が必要です。

トイレだけ寒くならないように冬場はトイレのドアは開けっ放しにすることをお勧めしていますが、それだけでは十分ではない場合には電気ストーブをお勧めしています。

ルームエアコンはスイッチをお入れてから部屋が温まるまで数分は必要ですが電気ストーブですと特に狭いトイレなどでは数秒で暖かくなります。

コンセントさえあればすぐにでも設置できますのでトイレの暖房にはお勧めです。

 

血圧の高度の上昇によって高血圧性脳症などの臓器障害が進行する場合は高血圧緊急症と呼び入院の上緊急降圧の対象となりますが、単に血圧が上昇しているのみで臓器障害のない場合は切迫症と呼びます。

切迫症は緊急降圧によって予後が改善するというエビデンスはなく、緊急降圧の対象とはなりません。

急な血圧上昇は寒暖差・精神的ストレス・不眠などでおこりますが原因が取り除かれると、例えば暖かい部屋でリラックスし十分な睡眠をとることで低下します。

ですので慌てて降圧剤を追加内服すると、原因が取り除かれて血圧が安定するころに降圧剤の効果が表れて過降圧をきたしかえって臓器障害を引き起こす可能性があります。

現在血圧を下げる薬ー降圧剤はたくさんありますが、血圧の変動を抑える薬はありません。

あえて言うなら精神安定剤や睡眠薬でしょうか?

血圧の日内変動や日間変動が臓器障害を悪化させるというエビデンスは存在しますが、その変動を抑える薬はありません。

個人的にはそういった薬の開発を望んでいるのですが、まだ開発されていないのが現状です。

 

 

緊急に血圧を下げる必要のある状態を高血圧緊急症と呼びます。

単に血圧が高いのみではこの高血圧緊急症には該当せず切迫症と呼びます。

網膜出血・脳出血・高血圧性脳症・子癇などの高血圧による臓器障害が進行している状況や、脳梗塞血栓溶解療法後や冠動脈バイパス術後などの高血圧による臓器障害が危惧される状況が該当します。

これら高血圧緊急症に該当する場合は原則として入院し、内服薬ではなく持続注射薬で降圧を行います。

この高血圧緊急症では急激で過度な降圧は臓器障害を悪化させる可能性がありはじめの1時間での降圧は25%未満にしなければなりません。

持続注射薬を用いる理由は、作用時間が短く下がり過ぎた場合にすぐに投与を中断し過降圧にならなくて済むからです。

内服薬を投与してしまうと効果が強すぎても中断することができず過降圧による臓器障害を招きかねないからです。

 

私が研修医の頃は「慢性腎臓病」という表現はありませんでした。

腎臓病の表記は、「メサンギウム増殖性糸球体腎炎」「膜性腎症」「巣状糸球体硬化症」などと言った病理所見に基づいた病名がメインで各々の病型に応じて治療がなされており目標は透析回避でした。

いかにして腎機能を保護し末期腎不全になるのを予防するかということに重点を置いた治療をしていました。

その後多くの腎疾患、特に糸球体疾患の予後規定因子は腎不全ではなく脳血管疾患であるというデータが示されました。

すなはち、腎疾患のある方は末期腎不全に陥って命を失うよりむしろ脳卒中や心臓病などの病気で命を脅かされるということが判明し「慢性腎臓病」として脳血管疾患予防に重点が置かれるようになりました。

さらにその後、腎機能低下とは全く別に、蛋白尿の存在そのものが脳血管疾患の独立した危険因子であるということが示され今日では慢性腎臓病は腎機能の程度と蛋白尿の量で病状が示されます。

そして、この蛋白尿の有無は降圧薬の選択に大きく影響します。

糖尿病を合併するかしないかに関わらず、蛋白尿のない慢性腎臓病にはアンジオテンシン変換酵素阻害薬やアルドステロン受容体拮抗薬の有効性は示されていません。

そして今日でもやはり病型によっては腎機能保護のためにステロイドホルモンや免疫抑制剤が必要となることもあります。

一概に「慢性腎臓病」で片づけるのは危険ではないかと常々考えており、原疾患は何かを推定しながら診療をしています。

糖尿病の方の腎機能低下が全て糖尿病性腎症ではありませんし、高血圧の方の腎硬化症にも障害部位は複数推定されうります。

全ての腎臓病を「慢性腎臓病」とひとくくりにして扱い、全ての症例にアンジオテンシン変換酵素阻害薬やアルドステロン受容体拮抗薬を投与することは危険だと最近よく考えます。

 

 

一般的に蛋白尿とは尿中の蛋白が0.15g/日と定義されることが多く、これは一般の試験紙法でも検出可能となり始めるレベルです。

もし糖尿病の患者でこれが認められると「糖尿病性腎症」ということになり、高血圧を合併する方ではアンジオテンシン受容体拮抗薬の絶好の適応となります。

ただし、このレベルの腎症では非可逆的で蛋白尿は陰性化しません(減少はします)。

さらに早期の腎症を検出するには尿中微量アルブミンという検査もあり試験紙法より感度の高い検査です。

尿中微量アルブミン尿のみが検出される時期の腎症でしたらアンジオテンシン受容体拮抗薬により微量アルブミン尿は陰性化する可能性もがあります。

但し、大規模臨床試験では「尿蛋白陰性の糖尿病ではアンジオテンシン受容体拮抗薬は腎不全進展抑制効果はない」とされています。

話がややこしくなりますが、「尿蛋白陽性」という段階ではもちろんアンジオテンシン受容体拮抗薬が推奨されますが、厳密にいうと「微量アルブミン陽性」以上でアンジオテンシン受容体拮抗薬が推奨されるということになります。

つまり尿中微量アルブミン陰性の場合はアンジオテンシン受容体拮抗薬の効果は認められないということになります。

結局のところ、アンジオテンシン受容体拮抗薬が推奨されるのは糸球体障害による腎症に限ると解釈されます。

 

 

 

 

現在発売されている腕時計型のカフレス・ウェラブル血圧計は、マンシェットで上腕の動脈を圧迫しマイクロフォンで動脈のコロトコフ音を測定する従来のものとは全く原理が違います。

カフレス・ウェラブル血圧計ではLEDの光の反射をフォトデテクタで検出し脈波波形を得ることによって、脈波伝達時間・パルス輪郭波形・加速度脈波法から血圧を推定するものです。

正確さについては日本高血圧学会で「誤差が大きく、実地診療で正確な血圧測定をすることは困難」とされています。

便利ではあるとは思うのですが、現在のところは医療にはお勧めできないようです。