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タグ アーカイブ: 高血圧

投稿

高血圧の話 77 褐色細胞腫

院長ブログ

交感神経は名前の通り神経であり、電気信号で刺激を伝達しますが効果を発揮する臓器の直前では神経伝達物質という化学物質で刺激を伝えます

その神経伝達物質は交感神経の場合はノルアドレナリンでこれがたくさん放出されると臓器の受容体と結合し交感神経緊張が高まり血圧が上昇します

ところで、交感神経受容体にはα受容体とβ受容体があり両者とも昇圧効果を発揮し、逆に遮断すると血圧は低下します

ですがこの両者には効果の種類にに若干の差があり、特に血圧調節には顕著な差があります

α受容体はは血管を収縮させることで血圧を上昇させます

β受容体は逆に血管を軽度拡張しますが、その一方腎臓からのレニン分泌を促進し心拍数や心拍出量を増やすことから血圧を上昇させます

結局両者とも刺激を受けると血圧を上昇させ、受容体を遮断されると血圧は低下します

ところで、ノルアドレナリン以外にも類似した効果を発揮する物質は存在しカテコラミンと総称され、代表的なものにアドレナリンがあります

アドレナリンは交感神経終末の局所で作用を発揮する神経伝達物質ではなく、副腎から血中に放出され全身を流れるホルモンのような物質で作用はノルアドレナリンとほぼ同様です

ある種の副腎の腫瘍でこのカテコラミンがたくさん分泌されると血圧が上昇し、褐色細胞腫と呼ばれます

高血圧の一部にはこの褐色細胞腫が混じっており注意が必要です

交感神経緊張による血圧上昇なので動悸を伴います

動悸を伴う高血圧なのでβ遮断薬が最適と考えられがちですが、実はこの場合β遮断薬は禁忌です

β遮断薬を単独で投与すると行き場を失ったカテコラミンがα受容体に殺到しunopposede α stimulation と呼ばれる高度のα受容体刺激が起こり血圧は急上昇します

褐色細胞腫の場合にはまずα受容体遮断から開始することが必須で治療を間違うとアクシデントの原因になります

 

 

 

 

 

2026年5月6日

高血圧の話 76 尿中Na/K

院長ブログ

高血圧に対してナトリウム(Na)制限すなはち6g/日以下の塩分制限が推奨されることはご存じだと思います

一方でカリウム(K)を多く摂取することも推奨されています

Kを多く含む生野菜や果物を多く摂取すればそれだけ血圧の低下につながります

では、自分は現在この目標をどの程度達成できているのだろうか、という疑問に対して尿中のNa/K比の測定が有用です

摂取したNaのうち約90%が、Kの80%が尿中に排泄されることから、尿中のNaやK濃度から摂取したNaやKを推定できます

そして理想的なNa/K比は2未満が指摘目標であるとされています

ただこの数字はハードルが高く、厚生労働省からは4未満が実現可能目標と発表されています

 

2026年4月2日

高血圧の話 75 triple whammy

院長ブログ

RAS系阻害薬(アンジオテンシン変換酵素阻害薬・アルドステロン受容体拮抗薬)と利尿剤は推奨される降圧剤の組み合わせで実際にアルドステロン受容体拮抗薬と利尿剤の合剤も発売されています

しかしながら個々のNSAID(非ステロイド系抗炎症薬)が加わるとtriple whammy(三段攻撃)と呼ばれる危険な併用になります

急性腎障害や腎機能低下のリスクになりうります

高齢高血圧患者や心不全、腎機能の低下した患者では特に注意が必要です

 

2026年2月19日

心臓病の話 3 拡張型心筋症

院長ブログ

心室の内圧をP、

心室の内腔の半径をR、

心室壁にかかる張力をT とすると

T=2PR

という式が成り立ちます

たとえば高血圧などで左心室の内圧が上がるとそれだけ左心室壁にかかる張力は増加しますので増えた張力に対応するため左心室壁は内腔側に心筋を増生し内腔を狭くする心筋肥大(求心性肥大)がおこります

あるいはシャント疾患や弁膜症などで左心室に容量負荷がかかり左心室が広がるとその結果として心室壁にかかる張力が増えますのでその張力に耐えるために心室壁は肥厚し強度を増します

すなはち、拡大は必ず肥大を伴いますが、肥大は必ずしも拡大を伴いません

もし肥大を伴わない拡大があればそれは心筋そのものに異常があると言えます

拡張型心筋症はその例で、左心室の筋肉に異常がおこり収縮力が低下すると拍出量を保つために心室は拡大しますが、拡大したにもかかわらず肥大しません

超音波検査で拡大しているにも関わらず肥大のない左心室を見た場合、その時点で心筋の異常であると結論できます

心筋が収縮力を失う病気の中で頻度が多いのが拡張型心筋症です

現実には拡張型心筋症の原因は不明ですし、心筋症そのものを治す治療も現在のところありませんので心筋生検といったリスクのある検査はしないのが一般的です

拡張型心筋症に類似しした疾患には虚血性心疾患によるもの、心筋炎の後遺症、アミロイドーシスやサルコイドーシスがありますが、アミロイドーシスを除いて特異的な治療法はありませんし心アミロイドーシスの治療も一般に普及している段階ではないので治療は心不全対策になります

この分野は遺伝子レベルの研究が望まれる分野だと思います

 

 

 

 

2026年1月22日

高血圧の話 74 75歳以上の高齢者の降圧指針

院長ブログ

75歳以上の高齢者の高血圧は血圧変動性が大きい、収縮期高血圧が多い、起立性や食後低血圧が多いなどの特徴があり、一概に年齢だけでは身体の活動性なども決められないこともあり

75歳以上の高齢者の高血圧については以下の4種のカテゴリに分類して降圧目標を立てることが推奨されています

①カテゴリー1:自力で外来通院が可能な方で目標は130/80以下です

②カテゴリー2:外来通院に介助が必要な方で140/以下を目標とするが合併症のある場合には130/以下を目標とする

③カテゴリー3:外来通院が困難な方で150/以下を目標にし120/以下にはしない

④カテゴリー4:エンド・オブ・ライフの方では個別に判断するが目標は140~160/で新たな降圧は開始しない

高齢者では降圧薬の副作用も出やすいので慎重に経過を見る必要があります

 

2026年1月15日

高血圧の話 73 SPRINT 試験

院長ブログ

フラミンガム研究などの観察研究で収縮期血圧120以上から心血管合併症が増えてくることは以前から明らかにされており,収縮期血圧120は至適血圧値とよばれていました。

しかし降圧薬治療でこのレベルまで介入することの是非については多くの議論がありましたが、血圧を120以下に下げることの有用性を証明した大機御臨床研究がSPRINT試験です

収縮期血圧を120以下に降圧した場合には140を目標にした場合に比べて心不全や心筋梗塞などの心血管イベントが25%も低下し、全死亡も27%も低下したという結果を踏まえてアメリカでは高血圧の基準が130/80に引き下げられました

日本での高血圧の基準はそれには追随しなかったものの、2025改定の「高血圧管理・治療ガイドライン」では「120/80以上の血圧を呈するすべての者を血圧管理の対象とする」と宣言されています

ただちに降圧剤を内服するかは別にして生活習慣の改善などを開始することを推奨されています

ちなみにSPRINTでは血圧は医師のいない場所で自動血圧計で3回計測した血圧の平均値を血圧として採用しています

診察室での血圧は家庭血圧より高値である場合が多く血圧は家庭で測定することが基本だと思います

 

2025年12月4日

高血圧の話 72 ストレインベッセル

院長ブログ

特に左の腎臓は130mmHgもの圧力がかかり太さ2センチ以上もある大動脈から数センチしか離れていないにも関わらず極めて細い血管にまで分岐し糸球体を形成します

ですので腎臓の中の微小な血管は太さに比べてすごく大きな圧力がかかっておりこれをストレインベッセルと呼びます

構造上血管壁のダメージを受けやすく血流の障害は蛋白尿のない腎機能低下につながります

こういう場合には降圧薬としてアルドステロン受容体拮抗薬の優位性はなく、カルシウム拮抗薬も選択肢になります

こういう状況は腎硬化症と呼ばれますが、全身の他の動脈例えば脳や心臓あるいは眼の血管でも同様のことがおこっている可能性がありますので注意が必要です

 

2025年11月6日

心不全の話 31 左室収縮能の保たれた心不全(HFpEF)と高血圧

院長ブログ

HFpEFの長期予後を改善する効果を証明された薬は長らくなかったのですが、2021年以降の臨床研究から糖尿病治療薬のSGLT2阻害薬がHFpEFの標準的な治療薬として位置づけられました

しかしながらそれ以外の薬剤は未だに有効性が不明または無効でHFpEFの治療はまだまだこれからの分野です

また今年改定された高血圧のガイドラインでは、HFpEFに対して血圧を130未満にすることが推奨されています

その解説を見ますと

「HFpEFにおける収縮期血圧130未満の血圧管理は、130以上の管理と比して全死因死亡を26%減少させ統計的には優位ではなかったものの抑制傾向が認められた」

と若干歯切れの悪い表現です

個人的意見ですが、これはHFpEFというのが一つの疾患ではなく多くの病態をひっくるめて論じているからではないかと思います

左室収縮能の保たれた心不全、言い換えれば心臓の動きが良いにもかかわらず心不全であるというのはいろんなケースを含みます

最も多く想定されているのが

・左室拡張障害;左心室の収縮は良いが左心室が硬く広がりにくくなっているためにその手前の肺にうっ血がおこっている

だと思うのですが、それ以外に

・頻脈など不整脈によるもの

・弁の機能異常

・脱水

・腎機能低下などによる循環血液量の増加

などたくさんあると思います

ですからHFpEFはまずどのようなメカニズムでおこっているのかをはっきりさせ個々の血行動態に合わせた治療をするのが現状ではベストだと思っています

 

2025年10月9日

高血圧の話 71 降圧薬の歴史

院長ブログ

太平洋戦争を指揮したアメリカのフランクリン・ルーズベルト大統領は重症高血圧だったそうです

死去したのが1945年の終戦直前でしたが、当時の血圧は300/だったと記録があります

脳出血でなくなったのですが、どうしてそんな血圧を放置したのでしょう?

理由は二つあります

・当時血圧は高い方が臓器血流が良くなる、すなはち血圧が上昇するのは良い反応だと信じられていた

・有効な降圧剤がなかった

意外なことですが高血圧治療の必要性が認識され、臨床に降圧剤が用いられるようになったのは戦後です

案外歴史の浅い治療なんですね

 

 

2025年10月2日

高血圧の話 70 ガイドライン

院長ブログ

日本高血圧学会発行のガイドラインが今年改定されました

以前のものは

「高血圧治療ガイドライン2019」で今回改定されたのは

「高血圧管理・治療ガイドライン2025」

に名前自体が変わりました

そして第1部「国民の血圧管理」では高血圧の予防・啓発活動に従事する方々が利用対象となっており予防医学に重点が置かれています

ですので医師以外の方が読むことを想定されておりネット通販などで購入可能です

ご興味のある方は是非一度ご覧ください

 

2025年9月25日
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