治療を要する不整脈のうち最も頻繁に出会うのがこの心房細動だと思います。

そして最近ますますこの心房細動に出会う頻度が増えているような気がします。

心臓には心室と心房がありますがそのうちの心房の筋肉が細かく震えてしまい全体としての統制の取れた収縮をせずポンプ機能が失われた状況です。

心室に血液を送り込む能力が損なわれ心拍出量も20パーセント程度低下します。

特に拡張期(心室に血液の流れ込むタイミング)が相対的に短くなる頻脈の場合には心拍出量の低下が大きくなりますので頻脈性心房細動は心不全の原因になりうります。

しかし何といっても一番恐ろしいのは心房内で形成された血栓が血流にのって脳にとんで行く脳梗塞です。

したがって脳梗塞のハイリスクであると考えられる場合には血液を固まりにくくして血栓を予防する必要があります。

古くはワーファリン、現在ではDOACと呼ばれる薬を用います。

心房細動についてはこのブログで少しづつ詳しく説明させていただこうと思います。

 

高血圧をカテーテル手術で治すという試みをご存じの方は少ないと思います。

太腿の血管から腎臓の動脈までカテーテルを挿入し高周波で血管の神経を破壊し血圧を低下させるという治療を「腎交感神経デナベーション」と言い2009年から臨床に用いられています。

血圧の薬を毎日飲む必要がなくなるのではないかと期待され一時はかなり話題になりました。

しかしながら、血圧低下効果が期待されたほどではないという研究結果が発表され、それ以後は以前ほどは注目されなくなりました。

今でも対象を絞れば一定の効果が期待できるのではないかと臨床研究は継続中です。

長期成績が未だ不明ですので確定した評価は難しいのですが、知見を積み重ねてどういう結果が出るのか興味があります。

 

 

診察室血圧が140/90未満でも家庭での早朝の血圧が135/85を超える場合は早朝高血圧と呼び、脳卒中や心臓病あるいは腎臓病のリスクとなります。

現実に診察室で診断された高血圧より臓器障害が進行している場合が多く、十分な血圧管理が必要です。

原因は

・飲酒

・喫煙

・寒冷な環境

・動脈硬化

・不十分な降圧薬治療

です。

家庭血圧は朝と夕の二回特に早朝に測られることをお勧めします。

特に冬は部屋を暖かく保ちトイレも寒くならないように注意をして下さい。

 

 

クリニックにご縁のある方がピザ屋さんをオープンされます。

楽しみです。

 

最近は抗原検査キットが市販され自身で検査が手軽にできるようになりました。

しかしこの抗原検査はその特徴と有用性さらに限界を知って使わないと間違った判断をすることがあります。

抗原検査キットには臨床用(診断用)と明記されているものとそうでない例えば研究用などと記載されているものがあります。

臨床用(診断用)キットとは下記のリンクをご覧いただければ分かりますが厚生労働省が定める基準を満たす精度を持ったもので現在35の製品があります。

https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000858746.pdf

これら以外のものはわかりやすく言えば、厚生労働省の定める基準を満たさない精度の低いものです。

 

PCR検査をはじめとする遺伝子増幅検査はコロナウィルスの数を増幅し検出しやすくする方法で、例えばRTーPCR法は1サーマルサイクルごとにウィルスの量が2倍になります。

一般的に34サーマルサイクル程度の増幅が多いので2の34乗倍すなはち約170億倍にウィルスを増殖させてウィルスを検出します。

一方で抗原検査は鼻腔に存在するウィルスをそのまま検出する検査なので感度はPCR検査に比べて圧倒的に劣ります。

ですので抗原検査では微量のウィルスしか存在しない状況では陽性と判定されません。

現実に抗原検査では陰性だった方がPCR検査では陽性と診断されることは珍しくありません。

PCR検査で陽性の人が抗原検査で陽性と診断される確率はどの程度でしょうか?

臨床用の抗原検査キットの中でも最も感度の高いもののひとつであるクイックナビでは

有症状の場合に89.3%、無症状の場合に67.1%です。

有症状の新型コロナ感染症の場合には鼻腔に既に相当数のウィルスが存在すると考えられます。

(逆に言うとウィルスが多いから症状がある)

こういう場合はPCR検査と比しても89.3%の感度があります。

しかしながら鼻腔に少量のウィルスしか存在しない無症状の場合は感度は67.1%に過ぎません。

 

抗原検査は発症後1日目から9日目の間に用いることが推奨されています。

無症状の場合には感度が低いからです。

すなはち無症状の方に抗原検査をして陰性だからと言ってウィルスがいないということにはなりません。

大きなイベントの前に関係者に抗原検査をして安全を確認するということがよく行われています。

しかしこの方法は上記の理由から危険です。

 

抗原検査は安価で結果が判明するまでの時間が数分程度と短く正しく使えば有用な検査です。

検査はその検査の特徴を知ったうえで用いるようにして下さい。

くれぐれも抗原検査で陰性確認などされないようにして下さい。

 

 

 

私が研修医の頃は血圧計といえば水銀計のことでしたが、現在は環境への配慮から電子血圧計に置き換わってしまいました。

水銀計の血圧は目盛りの関係から必ず偶数で130/82といった具合でしたから、例えば131/77といった奇数の血圧を見ると何となく違和感を感じます。

現在市販されている電子血圧計はどれも精密に作られておりどのメーカーのどの機種意を選択しても問題はないと思います。

ただし、測定部位は上腕式に限ります。

手首で測定するものは小型で安価というメリットはありますが、手首の橈骨動脈や尺骨動脈は腱や骨に囲まれており正確に圧迫できません。

また指尖式のものは上腕の動脈とは違った部位の血圧で同一に比べられません。

ですので血圧計は必ず上腕で測定するものを選択してください。

メモリー機能などの付いた高価なものである必要はありません。

家庭血圧は診察室血圧より日常生活の実態に近いもので、ぜひ一台血圧計を購入し家庭血圧を測定してください。

私は本を読むことが好きです。

ドキュメンタリー・歴史・政治や経済などいろんなジャンルの本を読みます。

主にブックオフの古本をたくさん買って次に読もうと置いてある本は数え切れません。

昨年読んだ中で最も印象深いのは『21Lessons』(ユヴァル・ノア・ハラリ著)です。

著者はエルサレム・ヘブライ大学の歴史学の教授なのですが過去の歴史から近未来を予想するという内容であまりに鋭い指摘にぞっとしたりします。

非常に示唆に富んで、もしかしたら私が生涯読んだ本の中で最も感銘を受けた本かもしれません。

『スマートフォンに目が釘付けになったまま通りを歩き回るゾンビたちを見たことがあるだろう。あなたは彼らがテクノロジーを支配していると思うだろうか?それともテクノロジーが彼らを支配しているのか?』

『イデオロギーに加えて、営利企業も虚構とフェイクニュースに頼っている。ブランド戦略は人々が真実と信じ込むまで同じ虚構の物語を何度となく語るという手法を取ることが多い。あなたはコカ・コーラについて考えた時どんな画像が頭に思い浮かぶだろうか?若くて健康な人々がスポーツをしながら一緒に楽しんでいるところを思い描くだろうか?あるいは太りすぎの糖尿病患者が病院のベッドに横たわっている姿を想像するだろうか?コカ・コーラをたくさん飲んでも若返れないし、健康になれないし、運動が得意にもなれない。むしろ肥満と糖尿病になる危険が高まる。それにもかかわらずコカ・コーラは長年莫大な資金を投じて自らを若さや健康やスポーツと結び付けてきた。そして何十億という人が潜在意識の中でその結びつきを信じている』

『世の中はますます複雑になっているのに、人々は今起こっていることにいかに無知であるか、気づけていない。その結果、気象学や生物学にろくな知識も持たない人が平気で気候変動や遺伝子組み換え作物についての政策を提案したり、イラクやウクライナを地図で見つけられない人がそうした国で何をするべきかに関して恐ろしく強硬な意見を唱えたりする。人々が自分の無知を正しく認識することはめったにない。なぜなら人々は同じ意見の友人や自分の意見を言裏付けるオンライオン配信のニュースからなる殻に閉じこもっておりそこでは自分の意見が絶えず増幅され正当性を問われることは稀だからだ』

等々、鋭すぎて背筋が凝りそうな指摘の連続です。

高校生の頃に『第三の波』(アルビン・トフラー著)を読んでいたく感動した記憶があります。

2022年の現在から見ればなんて言うことのない内容かもしれませんが、あの当時は情報工学が産業構造を変えるという予想の意味が全く理解できないままワクワク・ゾクゾクしました。

ハラリ氏は『もし何らかの問題が自分にとって格別に重要に思えるのなら、関連した科学文献を読む努力をすることだ。ただし、科学文献といっても専門家の査読を受けた論文や名の知れた学術出版社が刊行した書籍や定評のある大学や機関の教授の著作に限る。』

とも訴えています。

パソコンで何か調べ物をしていると私の気を誘うような期間限定バーゲン品の情報や格闘技のニュースや政治家のスキャンダルなどの無料のニュースが次々にポップアップし私にクリックさせようと躍起です。

そんな罠にはまったら最後1時間も2時間も無駄な時間を奪われた挙句に変な先入観を植え付けられます。

氾濫する情報の中で真実を見つけるには無料の情報には要注意です。

情報は力で、役に立つ情報はお金を支払う価値があるとも思います。

面倒くさがって自分の頭で考えない癖がつかないように気を払い、真偽不明の情報を鵜吞みにしない賢さが今流行りのcritical thinkingなんでしょうね。

冬になり気温が低下すると血圧は上昇傾向にあるようです。

この季節は特に家庭血圧と診察室血圧に乖離がみられる方が多いように感じます。

例えば診察では145/90であるのに家庭では130/80であるといった具合にです。

診察室に到達するまでに寒い屋外を通過し、若干の緊張感で血圧を測定すると高めになるのはある意味当然かもしれません。

ではどちらの血圧を基準にして治療するのが良いのでしょうか?

家庭血圧と診察室血圧の両者を基準にした治療結果、脳血管疾患の発生率や死亡率の差異を示した論文はありません。

しかしながら家庭血圧を基準に治療した場合のほうがより厳密なコントロールを達成できることが証明されています。

ですので、家庭血圧と診察室血圧に差異のある場合は家庭血圧を優先して治療の基準に用いることが推奨されています。

血圧計にも多くの種類がありますが、手首や指で測定するものは避けてください。

周囲の腱が多く正確に血管を圧迫できないからです。

上腕式のものであれば高価なものである必要はありません。

毎日朝と夕にできるだけリラックスして測定してみてください。

ぽっくり病という病名をお聞きになったことはあるでしょうか?

ぽっくり病は睡眠中に急に心臓が止まってしまい突然死する病気で欧米でも “Pokkuri disease” として一時話題になりました。

現在では心筋のナトリウムイオンの通り道に遺伝的な異常のあるブルガダ症候群として定義されています。

この病気は症状のない時でも特徴的な心電図を呈することから、健康診断の心電図でブルガダ心電図と診断されることがあります。

ブルガダ心電図を呈する方がすべてブルガダ症候群ではありませんが、健診の心電図からこの病気が判明し予防的な手術を受け突然死を免れるという例もあります。

また遺伝的な背景もありますので、突然死の家族歴のある方では特に注意が必要です。

心電図でこの病気が疑われる場合には通常とは違う場所に電極を付けて心電図を記録したり、ある種の抗不整脈薬を投与して心電図の変化を見たりする場合もあります。

診断が確定すれば内服薬では突然死を防げませんので、植込み型除細動器を植え込む手術をする必要がります。

当院に設置しております新型コロナウィルスを検出するリアルタイムRT-PCRは島津製作所製 Auto Amp と言い、一度に4検体が測定できますが結果判明に130分程度かかります。

主に唾液を用いて(鼻咽頭粘膜も可能)検査しますが、唾液の性情に影響を与える口腔内の状況により上手く検査ができなかったり偽陰性になったりするそうです。

特に唾液採取直前にカテキンを多く含む緑茶を接種するとカテキンの殺菌作用により偽陰性になるそうです。

ですのでPCRをご希望の方は来院前には緑茶の接種をお控え頂くのが望ましいと思います。

ところで、世界の中で日本だけが新型コロナウィルス流行が沈静化しています。

理由は多くの仮説があるものの証明された根拠のある説はなく、研究者の間でもミステリーと言われているようです。

もしかしたら日本人が多く摂取する緑茶の効果もあるのでしょうか?

そう言えば新型コロナウィルス対策に毎晩アルコールで喉や胃を消毒しているという方がおられました。

効果は・・・?