ぽっくり病という病名をお聞きになったことはあるでしょうか?

ぽっくり病は睡眠中に急に心臓が止まってしまい突然死する病気で欧米でも “Pokkuri disease” として一時話題になりました。

現在では心筋のナトリウムイオンの通り道に遺伝的な異常のあるブルガダ症候群として定義されています。

この病気は症状のない時でも特徴的な心電図を呈することから、健康診断の心電図でブルガダ心電図と診断されることがあります。

ブルガダ心電図を呈する方がすべてブルガダ症候群ではありませんが、健診の心電図からこの病気が判明し予防的な手術を受け突然死を免れるという例もあります。

また遺伝的な背景もありますので、突然死の家族歴のある方では特に注意が必要です。

心電図でこの病気が疑われる場合には通常とは違う場所に電極を付けて心電図を記録したり、ある種の抗不整脈薬を投与して心電図の変化を見たりする場合もあります。

診断が確定すれば内服薬では突然死を防げませんので、植込み型除細動器を植え込む手術をする必要がります。

当院に設置しております新型コロナウィルスを検出するリアルタイムRT-PCRは島津製作所製 Auto Amp と言い、一度に4検体が測定できますが結果判明に130分程度かかります。

主に唾液を用いて(鼻咽頭粘膜も可能)検査しますが、唾液の性情に影響を与える口腔内の状況により上手く検査ができなかったり偽陰性になったりするそうです。

特に唾液採取直前にカテキンを多く含む緑茶を接種するとカテキンの殺菌作用により偽陰性になるそうです。

ですのでPCRをご希望の方は来院前には緑茶の接種をお控え頂くのが望ましいと思います。

ところで、世界の中で日本だけが新型コロナウィルス流行が沈静化しています。

理由は多くの仮説があるものの証明された根拠のある説はなく、研究者の間でもミステリーと言われているようです。

もしかしたら日本人が多く摂取する緑茶の効果もあるのでしょうか?

そう言えば新型コロナウィルス対策に毎晩アルコールで喉や胃を消毒しているという方がおられました。

効果は・・・?

 

高血圧の場合塩分制限が大切であるのはご存じと思います。

一日の塩分摂取量を6グラム以下に制限することが血圧を下げますが、カリウムはナトリウムの血圧上昇を抑えることから野菜や果物などカリウムを多く含む食事の摂取により降圧が期待できます。

カリウム摂取により血圧が低下する以外にも、一日カリウム摂取量3.5グラムの場合脳卒中のリスクが最小になることが判明しています。

野菜・果物・低脂肪乳製品が豊富で飽和脂肪酸とコレステロールが少ないDASH食とそれに塩分制限を加えたDASH-sodiumu食が高血圧の方には特に推奨されます。

地中海食・ノルディック食や塩分制限と組み合わせた日本食などがこれに近いものです。

ただし、腎機能低下のある方はカリウム多量摂取には注意が必要です。

コロナウィルスパンデミックで本当に多くのことを経験し多くのことを学びました。

現在当院で実施している発熱外来は、発熱または上気道炎症状のある方は受診前に予め問診をし階下の別室で診察をする、発熱患者さんを一般の患者さんから完全に隔離するという方法です。

これはもちろん新型コロナ感染症を念頭に置いたものなのですが、どうして今までこのような方式をとらなかったのだろうと自問自答することがあります。

パンデミック前を思い出せば、特に冬の風邪の季節にはどこの医療機関も同じ待合室に糖尿病の方、喘息でステロイドホルモンを服用されている方、膠原病で免疫抑制剤を使用中の方や肺気腫の方が風邪やインフルエンザの方と一緒にお待ちでした。

新型コロナ肺炎を診療するようになって感染対策に配慮するようになった今から考えると、以前はなんと配慮のないことをしていたのかと痛感します。

単なる風邪でも肺気腫の方や免疫機能の抑制されている方は時として致死的になります。

いつかこの新型コロナウィルスパンデミックが終息しても、私は現在の発熱外来という診療方法を継続しようと思います。

不整脈には心拍数が多くなる頻脈性不整脈と逆に少なくなる徐脈性不整脈がありますが、徐脈性不整脈の原因の一つに洞不全症候群があります。

心臓の電気的活動は右心房の一番上にある洞結節という場所で始まります。

この洞結節の機能が低下し心拍数が少なくなるのが洞不全症候群です。

脈拍が毎分30程度に減少すると脳貧血状態となりふらつきや欠神発作がおこります。

洞不全症候群のすべてが治療を要するものではありませんが、このような症状がある場合は緊急の治療が必要です。

薬物治療は一般的ではなくペースメーカー植え込み手術をすることになります。

ただ、かなりのハードトレーニングを積んだ一流のアスリートには安静時の心拍数が極端に少ない方がおられます。

もちろんこういう場合は治療の必要性はありません。

ヤフーが中国から撤退するというニュースを耳にしました。

中国や北朝鮮などの共産主義国家ではネットの検閲があるとお聞きしています。

しかし時々日本でも検閲があるのではないかと疑いたくなるくらい検索でヒットしないキーワードがあります。

『t-PA スキャンダル』

がその一つです。

我々医師は各学会発表のガイドラインに沿った形で診療を勧めます。

そしてそのガイドラインは学会で主導的立場にある研究者たちの合議で作成されていました。

t-PAという高額な薬剤がある年に突如として急性心筋梗塞や脳卒中の第一選択薬として推奨されました。

このガイドラインには当時駆け出しの医師だった私にも大きな違和感がありました。

急性心筋梗塞に対してはバルーンを使って血管を拡張させるPTCAという治療が既に根付きつつあったからです。

結局そのガイドラインは大きな議論を呼び、あっという間に改定されました。

そしてガイドライン策定委員会の医師たちに製薬会社から高額の献金がされていたというスキャンダルが発覚しガイドライン作成のありかたそのものを考え直すきっかけになりました。

https://medical.nikkeibp.co.jp/inc/all/hotnews/archives/176990.html

現在でガイドラインは参考にした研究や論文を挙げ、その論文からその治療がどの程度の根拠をもって推奨されるのかという表現形式に変わっています。

また正式に発表される前に原案が公開されパブリックコメントが求められます。

より公平な形で作成されているという訳です。

 

この事件は現在ネットで検索しても本当にヒットせず上記リンクのみが唯一のヒットです。

この事件をヒントに作成された映画がハリソン・フォード主演の「逃亡者」だと言われています。

私より若い世代の医師はおそらくこの出来事を知らない人が多いのではないでしょうか?

心筋梗塞の既往がある方では心室期外収縮や非持続性心室頻拍という不整脈がみられ、時として死につながることが分かっています。

私が医師になった1987年にはこういうケースでは抗不整脈薬が処方され、投与後に24時間心電図などで不整脈が減少するのを確認してほっとする、ということが普通にありました。

しかしこの状況は1991年に英国の医学誌 New England Journal of Medicine に発表された論文 CAST (Cardiac arrhythmia suppression trial)で大きく変わりました。

この論文では心筋梗塞後の心室期外収縮を抗不整脈薬または偽薬で治療した1498人を追跡調査しましたが、抗不整脈薬で治療した場合にかえって死亡率が増加することが明らかになり、世界中の循環器内科医に天と地がひっくり返るほどの衝撃を与えました。

患者の命を救うと信じて投与していた薬が実は全く逆の結果になっていた訳ですから一時は臨床の現場は大混乱だったといっても過言ではないと思います。

今日では、不整脈はどういう場合に介入する必要がありどういう治療が適しているのかを大規模臨床研究から得られたエビデンスをもとに選択します。

1987年の頃に比べて現在では治療が必要と判断される不整脈は少なくなったように感じます。

そして致死的不整脈には除細動器やアブレーションといった非薬物療法が汎用されるようになりました。

全ての抗不整脈薬の副作用は不整脈です。

使い方を誤ると逆効果になります。

不整脈ほどエビデンスを重視する分野も少ないのではないでしょうか?

 

新型コロナ肺炎が流行してから本当に多くの申請書を公的機関に提出しています。

クリニックで発熱患者さんを診察するのに申請が必要ですし、コロナの検査をするのに申請が必要です。

さらにワクチン接種やスタッフの慰労金に補助金の申請など数えきれないほどの申請書を記入提出しました。

その最後には大抵「反社会的勢力でないことの宣誓」をする書類があり、オンライン申請の場合には「はい」「いいえ」からどちらかを選ばなければなりません。

例えば

「わたしは反社会的勢力の一員ではありません」

という文章に

「はい」

と答えることになります。

ところで、私は2年ほど前から英会話を習っているのですが、英語と日本語では”YES”と”NO”が全く逆になることがあります。

「わたしは反社会的勢力の一員ではありません」は英語で ”I am not a member of antisocial forces” ですが

答えは

「はい、違います」で英語で ”No, I am not”

となります。

つまり日本語で「はい」、英語で “NO” です。

先日、大阪府感染症対策課から電話があり

「先生は反社会的勢力ですか?」

と聞かれました。

初めは何のことを仰っているのか分からなかったのですが、要するに

「わたしは反社会的勢力の一員ではありません」

という宣誓文に私は

「いいえ」

と答えていたそうです。

私の中途半端な英語力が日本語の邪魔をして大きな誤りを犯してしまったという訳です。

電話で

「私は決してその様な反社会的勢力と関わりもなく、極めて善良な市民で運転免許もゴールドです」

とお答えしたところ、電話の向こうで笑いながら

「了解しました、こちらで訂正しておきますね」

と仰って頂きほっとしました。

 

 

動悸を自覚して受診される場合、その原因を特定するのは容易でない場合があります。

動悸を自覚している、まさにその時の心電図を見ることができれば診断はすぐに確定します。

しかしながら、この動悸を自覚している時の心電図を記録するのにいつも苦労します。

診察室で記録する心電図では、診察中に偶然動悸が出現すれば診断が可能なのですがそういうケースは稀です。

ホルター心電図(24時間心電図)はマッチ箱位の大きさの心電計を胸部に装着し24時間分の心電図をメモリーカードに記録しますが、装着している24時間の間に動悸がおこらなければ検査は空振りです。

また携帯型心電図を1~2週間携帯して動悸時に自身で心電図を記録する方法もありますが、心電計を取り出している間に不整脈が治まってしまう場合や睡眠中の自覚に乏しい不整脈は記録はできません。

実は先日アップルウォッチを用いてご自身で動悸時の心電図を記録し持参された方がおられました。

治療の必要な不整脈が見事に記録されすぐに診断が確定しカテーテル治療の手配をするということができました。

このアップルウォッチは現在のところ保険適応がありませんので自身で購入するしかないのですが、不整脈検出には有効な手段であることを実感しました。

一日も早い保険適応を望みます。

診察室で測定すると高血圧なのに家庭で測定すると正常という、白衣高血圧の場合にはどうするべきなのでしょうか?

事実として

①白衣高血圧の方は高血圧でない方と比較して、脳卒中・心疾患・死亡のリスクに有意な差はない

②白衣高血圧の方は白衣高血圧でない方と比較して将来高血圧症を発症する可能性が高い

ことが分かっています。

ですので白衣高血圧の方は直ちに降圧剤を服用する必要はありません。

しかし、将来の高血圧発症を発見するために家庭血圧測定を継続し注意深い経過観察をすることが推奨されます。

また、白衣高血圧の方が塩分制限を実施すると将来の高血圧症発症を予防できるかの十分なエビデンスはありませんが、日本人全体が塩分の過剰摂取ですので白衣高血圧の方も塩分制限をすることは推奨されると思います。