HFpEFの長期予後を改善する効果を証明された薬は長らくなかったのですが、2021年以降の臨床研究から糖尿病治療薬のSGLT2阻害薬がHFpEFの標準的な治療薬として位置づけられました
しかしながらそれ以外の薬剤は未だに有効性が不明または無効でHFpEFの治療はまだまだこれからの分野です
また今年改定された高血圧のガイドラインでは、HFpEFに対して血圧を130未満にすることが推奨されています
その解説を見ますと
「HFpEFにおける収縮期血圧130未満の血圧管理は、130以上の管理と比して全死因死亡を26%減少させ統計的には優位ではなかったものの抑制傾向が認められた」
と若干歯切れの悪い表現です
個人的意見ですが、これはHFpEFというのが一つの疾患ではなく多くの病態をひっくるめて論じているからではないかと思います
左室収縮能の保たれた心不全、言い換えれば心臓の動きが良いにもかかわらず心不全であるというのはいろんなケースを含みます
最も多く想定されているのが
・左室拡張障害;左心室の収縮は良いが左心室が硬く広がりにくくなっているためにその手前の肺にうっ血がおこっている
だと思うのですが、それ以外に
・頻脈など不整脈によるもの
・弁の機能異常
・脱水
・腎機能低下などによる循環血液量の増加
などたくさんあると思います
ですからHFpEFはまずどのようなメカニズムでおこっているのかをはっきりさせ個々の血行動態に合わせた治療をするのが現状ではベストだと思っています