自律神経には交感神経と副交感神経があり、それぞれ逆の作用を持っているということはご存じだと思います
交感神経は血圧を上昇させ脈拍を増やし気管支を拡張し腸管運動は低下させます
一方、副交感神経はその逆で血圧を低下させ脈拍を減らし気管支を収縮し腸管運動は亢進します
脳から出た自立神経は末梢の組織まで神経線維を通じて電気信号を送り目標とする臓器の活動をコントロールします
この自律神経線維には目標臓器の手前に中継地点があり、神経と神経の継ぎ目(神経節)があります
この神経節だけは電気信号ではなく神経伝達物質という化学物質が刺激を伝達します
交感神経ではノルアドレナリン、副交感神経ではアセチルコリンです
神経節の手前の神経線維(節前線維)から放出された神経伝達物質は極めて狭い神経の継ぎ目を移動し節後線維の受容体に結合し刺激を伝えます
交感神経節後線維のノルアドレナリン受容体にはいくつかの種類があり、β受容体と呼ばれるものが存在します
β受容体にはさらにβ1とβ2受容体があり臓器によって分布が異なります
心臓には主にβ1受容体が、気管支には主にβ2受容体が分布します
ですので、心拍数を低下させたいが気管支の収縮させたくないという場合にはできるだけβ1受容体のみを選択的に阻害するβ遮断薬を選んで用いなければいけません
つまり、気管支喘息を合併した心不全ではできるだけβ1選択性の高いβ遮断薬を用いる必要があります
ただ、注意が必要なのですが多くの薬剤情報に記載されている情報は動物実験に基づいている情報も多く人間とは若干状況が異なる場合もあります
また心臓にはβ1受容体、気管支にはβ2受容体と言いますが100%ではありませんし、薬剤のβ1選択性と言っても必ずしも100%ではありません
ですので気管支喘息合併心不全の治療には細心の注意が必要です
新クリニック移転まで一か月を切りました
ご迷惑をおかけし申し訳ありません
