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今年もクリニックのつつじが満開を迎えました。

本当にきれいな色で圧倒される奇麗さです。

私は歴史小説が好きで特に戦国時代と太平洋戦争に関するものが好きなのですが、このつつじを見るといつも戦国時代の武将武田信玄を思い出します。

躑躅が崎と呼ばれる館に住み城を持たなかった珍しい存在です。

下剋上と言われるように権謀術数の時代にどうやってあれだけの家臣団や部下の心をつかんだのか、その人間力には本当に興味があります。

実の父を国外追放し、実子を切腹に追い込みながら一方で家臣の忠誠を引き出すとはいったいどんな人間だったのか、外からは推し量ることのできない苦悩があったにちがいありません。

そんな英雄がこのつつじを眺めながら何を考えていたもでしょうか?

そんなことを考えるのも今の時期だけの楽しみです。

私が奈良県立医科大学で医学を学んだ昭和56年~62年はまだ内科診断学全盛の時代でした。

内科診断学とは視診・触診・聴診などの身体所見から病状・診断を探ろうとする、当時は医師の基本技術と考えられていたものです。

心臓の聴診だけで、弁膜症の名前と重症度を言い当てる言わば名人芸のような技術を磨くことが重要視されていました。

現在では超音波検査をすればすぐにわかるのですが、その当時は聴診器が武士の魂である刀の様なものでした。

自慢するわけではありませんが、今でも心臓の音だけで例えば

「大動脈弁狭窄症で左心室・大動脈圧較差は25mmHg」

「三尖弁閉鎖不全 2/Ⅲ」

と言った診断ができます。

その分聴診器にはこだわりがあってオープンベルとダイアフラムの使い分けにも気を遣います。

ダイアフラムは胸壁に押し当てる強さで聞こえる心音の周波数が変化しますので、あて方によって聴こえる音と聴こえない音があります。

奈良県立医科大学の助教授で後に東大第二内科の助教授になられた武内重五郎先生の名著「内科診断学」も今となっては歴史的遺産になるのかもしれません。

日々新しい技術が開発され、当院で採用しているウェブ問診では患者さんが問診にこたえ終わると同時にAIが診断候補を提示してくれます。

私は最新の技術は「使った者の勝ち」だと思っています。

 

4月からはCOVID19に対する政策が変わります。

発熱外来を実施していない全ての医療機関で、ほかの患者から隔離することなく対応することが可能となります。

現実に医療機関によってはほかの患者さんと同じ待合室で発熱患者さんにお待ちいただくというケースも見られるようになるかもしれません。

しかしながら、当院では従来通りに発熱の方は予め電話でお申し込み頂き、ほかの患者さんとは別のお部屋でお待ちいただくというシステムを継続したいと思います。

通院治療をされている方の中には重症の呼吸器疾患・心疾患をお持ちの方や免疫能が低下し一旦感染すれば重症化が予測される方も多くおられます。

そういった方を感染から守るためには必須の方法だと考えます。

また、政策により新型コロナに対するワクチンの公費摂取は3月末で終了いたします。

インフルエンザウィルスと同様に頻繁に流行株の変異が起こり新しい免疫を獲得するために半年または一年毎のワクチン接種が必要となるかも知れません。

恐らく今秋には追加接種に関する情報が発表されると思いますが、どの程度の公費補助があるのかは未定です。

分かり次第このHPでお知らせいたします。

 

最近成人のRSウィルス感染を啓蒙するテレビCMが流れていますね。

RSウィルス感染というと小児疾患の印象がありますが、成人にも感染します。

体力のある大人でしたら単なる感冒といった印象しかないのですが60歳以上の方が感染した場合には肺炎など合併する頻度が高くなり時として致死的経過をたどるケースも見られるようです。

最近RSウィルスに対するワクチンが発売されました。

対象は60歳以上の成人ですが、重症化を予防する効果があるとのことです。

一度接種するとしばらく効果は持続し毎年接種する必要はないそうです。

ただし、インフルエンザや肺炎球菌ワクチンなどのような自治体からの補助はなく全額実費で25,000~30,000円程度の費用がかかります。

高額なワクチンですので常に在庫している医療機関は少ないと思います。

ご希望の方はお問い合わせください。

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20230828/k10014177051000.html

 

遅くなりましたが、新年あけましておめでとうございます。

今日はクリニックで鏡開きでした。

今では昔と違って鏡餅型の樹脂容器の中身は個包装された小餅です。

この方が衛生的で鮮度も保てるので良いですね。

私もスタッフの作ってくれた美味しい善哉を頂きました。

甘党の私にはたまらない御馳走で、疲れも吹き飛ぶ思いでした。

今年もよろしくお願い致します。

 

 

知人に勧められて新しい本を読んでいます。

「最悪の予感(マイケル・ルイス)」です。

結局日本では新型コロナウィルスによる死者は7万人台でしたが、アメリカでは実に100万人以上の方がお亡くなりになりました。

その原因をCDC(アメリカの疾病予防センター)の失策だと起訴するような内容だそうです。

後知恵で批判することはフェアーではないとは思いますが、反省は必要で私自身今回のパンデミックで多くのことを学びました。

ウィルスは常に変異をしており、同じようなパンデミックはまた来ると思います。

今回の一連の出来事から何を学ぶのかが、今必要なことと考えています。

次はもっと上手くやれるように備えなければいけません。

 

10月29日は約1年ぶりのドラディション大阪大会です。

今回はタッグトーナメントだそうです。

私はもちろん観戦する予定です。

当日が楽しみです。

 

クリニックにご縁のある方のご子息が新しくオープンしたお寿司屋さんの店長になられました。

鮨むら川 です。

https://tabelog.com/osaka/A2705/A270502/27135405/

地産地消をモットーに泉州産の魚や野菜を美味しく供してくれます。

大阪市内の高級店に負けないお店とお寿司でした。

店長は男前で女性ファンが殺到するかもです。

 

 

新型コロナウィルスが5類に変更後最大の流行を迎えています。

全例報告ではないので正確な数字は不明ですがどうやら過去最大の流行になりそうな勢いです。

インフルエンザウィルスが毎年変異を遂げ毎年ワクチンを接種しなければならないのと同様、新型コロナウィルスも常に新しい変異株が出現します。

デルタ株が大流行したのはご記憶の通りですが、現在流行の主流はオミクロン株です。

そしてオミクロン株も多くの変異した亜型が存在しそのうち特に感染力が強いなど注意するべき株は図の通りです。

問題は自分がその株にどの程度抵抗力があるのかということですが、新たに流行している株は多くの変異があり旧来のワクチン接種では予防できないことが多くみられます。

現在話題のEG.5(通称エリス)やBA.2.86(通称ピロラ)は現在われわれが持っている免疫力では感染を防げなさそうで大流行の可能性が指摘されています。

追加ワクチン接種はぜひ受けて下さい。

 

 

 

ネット上は情報で氾濫しています。

情報には真偽の不明なものも多く、あるいは意図的に他人の意見を操ろうとした作話も見られます。

そんな状況では間違った情報に踊らされて損をすることもありうります。

ですから最近は情報を鵜呑みにせず、批判的に情報を吟味すること『クリティカル・シンキング』が重要視されています。

医学論文でも第三者の翻訳を避けてできるだけ原著を読み、内容につき自分自身で確かめる能力が求められます。

例えば、現在心房細動などに第一選択薬としての地位を確立したDOAC(経口抗凝固剤)という薬があります。

多くの臨床研究でそれまで用いられてきたワルファリンより有効で副作用も少ないと証明されガイドラインでも第一選択薬となっています。

このDOACは4種類あるのですが、それぞれに大規模臨床研究が実施されています。

その一つにENGAGE AF試験という数千人の人を対象とした臨床研究があります。

ご興味のある方はネットで検索すれば日本語訳もありますのでご覧ください。

この臨床研究の結論は、このDOACは有効性ではワルファリンに劣っておらず、副作用はワルファリンより少なかったというものです。

素晴らしい結果だと思います。

しかし、原著を注意深く読むとワルファリンの治療域の割合は64.9%です。

ワルファリンを服用された方はご存じだと思いますが、ワルファリンはビタミンKによってその作用が邪魔されます。

ですのでワルファリン内服中の方はビタミンKを多く含む食品例えば納豆や青汁を控えるように勧められます。

しかし、ビタミンKは緑色野菜をはじめ多くの食材に含まれますので完全に絶つことは不可能です。

ですので、一般的には毎月受診するたびにPT(プロトロンビン時間)を測定し容量を調節します。

この論文ではワルファリンを服用されていた方は64.9%しか目標治療域になかったと言っています。

つまり10回受診するとそのうち3回以上は有効な治療域ではなかったという意味です。

これは私にはとても不自然です。

当院ではワルファリン服用中の方は90%以上が目標域にあります。

つまり十分に管理されていないワルファリン服用者と比較された試験であると推定されます。

もちろん直ちにこの薬剤の有用性を否定するわけではないのですが、私は例えば目標域に90%ある方々と比較したらどうだったのかに興味があります。

ワルファリンを恣意的に多めにすれば出血の副作用が増加する代わりに塞栓症の予防効果は増します。

逆にワルファリンを減らすと出血の副作用は減る代わりに塞栓症の予防効果は低下します。

ですので、このDOACを正確に評価するのは、塞栓症予防効果はワルファリンの有効域何%と同等で、出血副作用はワルファリンの有効域何%に相当するという表現が正確だと思うのですが。

今回は特定の薬の批判のようになってしまいましたが、そういう意図はなくその臨床研究に私なりの疑問があるという意味です。

『全ての発言はポジショントーク』というアドバイスを頂いたことがあります。

辛い時代ですね。