不整脈の話 19 心房細動 7

心房細動は頻脈になるとそれだけで心不全を起こしうりますから心拍数が増えすぎないように治療しなければいけません。

用いる薬剤はβ(ベータ)遮断薬、ジギタリス製剤、カルシウム拮抗薬、陽イオンチャンネル阻害薬などの選択肢がありますが最も汎用されるのはベータ遮断薬です。

一口にβ遮断薬と言っても多くの種類がありベータ受容体のサブタイプ(β1とβ2)の選択性、内因性交感神経刺激作用の有無で分類されます。

一般にβ1選択性が高く内因性交感神経刺激作用のない脂溶性のものが効果を発揮し汎用されます。

β1受容体選択制の低い薬は気管支に分布するβ2受容体にも作用し副作用を起こす危険性があるので敬遠されるのですが、心臓に分布するβ受容体が100パーセントβ1であるというわけではなく、気管支に分布するβ受容体が100パーセントβ2受容体というわけもないので気管支喘息などのある方は慎重に使用しなければいけません。

また薬剤のβ受容体の選択性については動物実験の結果をもとに表記されているケースもみられますので、実臨床の場で用いられるのは経験的にカルベジロール・ビソプロロール・メトプロロールの3種類です。

この3種類のベータ遮断薬は心拍数を低下させるのみならず、心房から心室への伝導も抑制しますので心房細動の場合には好都合です。

さらに血圧を下げる作用もあり高血圧を合併する方には一石二鳥と言えます。

心不全に対してはリバースリモデリング作用(低下した心機能を回復させる作用)があることも証明されており心房細動のみならず心不全にも第一選択薬です。