雑談 47 聴診器
私が奈良県立医科大学で医学を学んだ昭和56年~62年はまだ内科診断学全盛の時代でした。
内科診断学とは視診・触診・聴診などの身体所見から病状・診断を探ろうとする、当時は医師の基本技術と考えられていたものです。
心臓の聴診だけで、弁膜症の名前と重症度を言い当てる言わば名人芸のような技術を磨くことが重要視されていました。
現在では超音波検査をすればすぐにわかるのですが、その当時は聴診器が武士の魂である刀の様なものでした。
自慢するわけではありませんが、今でも心臓の音だけで例えば
「大動脈弁狭窄症で左心室・大動脈圧較差は25mmHg」
「三尖弁閉鎖不全 2/Ⅲ」
と言った診断ができます。
その分聴診器にはこだわりがあってオープンベルとダイアフラムの使い分けにも気を遣います。
ダイアフラムは胸壁に押し当てる強さで聞こえる心音の周波数が変化しますので、あて方によって聴こえる音と聴こえない音があります。
奈良県立医科大学の助教授で後に東大第二内科の助教授になられた武内重五郎先生の名著「内科診断学」も今となっては歴史的遺産になるのかもしれません。
日々新しい技術が開発され、当院で採用しているウェブ問診では患者さんが問診にこたえ終わると同時にAIが診断候補を提示してくれます。
私は最新の技術は「使った者の勝ち」だと思っています。