動悸を自覚して受診される場合、その原因を特定するのは容易でない場合があります。

動悸を自覚している、まさにその時の心電図を見ることができれば診断はすぐに確定します。

しかしながら、この動悸を自覚している時の心電図を記録するのにいつも苦労します。

診察室で記録する心電図では、診察中に偶然動悸が出現すれば診断が可能なのですがそういうケースは稀です。

ホルター心電図(24時間心電図)はマッチ箱位の大きさの心電計を胸部に装着し24時間分の心電図をメモリーカードに記録しますが、装着している24時間の間に動悸がおこらなければ検査は空振りです。

また携帯型心電図を1~2週間携帯して動悸時に自身で心電図を記録する方法もありますが、心電計を取り出している間に不整脈が治まってしまう場合や睡眠中の自覚に乏しい不整脈は記録はできません。

実は先日アップルウォッチを用いてご自身で動悸時の心電図を記録し持参された方がおられました。

治療の必要な不整脈が見事に記録されすぐに診断が確定しカテーテル治療の手配をするということができました。

このアップルウォッチは現在のところ保険適応がありませんので自身で購入するしかないのですが、不整脈検出には有効な手段であることを実感しました。

一日も早い保険適応を望みます。

診察室で測定すると高血圧なのに家庭で測定すると正常という、白衣高血圧の場合にはどうするべきなのでしょうか?

事実として

①白衣高血圧の方は高血圧でない方と比較して、脳卒中・心疾患・死亡のリスクに有意な差はない

②白衣高血圧の方は白衣高血圧でない方と比較して将来高血圧症を発症する可能性が高い

ことが分かっています。

ですので白衣高血圧の方は直ちに降圧剤を服用する必要はありません。

しかし、将来の高血圧発症を発見するために家庭血圧測定を継続し注意深い経過観察をすることが推奨されます。

また、白衣高血圧の方が塩分制限を実施すると将来の高血圧症発症を予防できるかの十分なエビデンスはありませんが、日本人全体が塩分の過剰摂取ですので白衣高血圧の方も塩分制限をすることは推奨されると思います。

健康診断の心電図で指摘される機会が多いのが脚ブロックです。

全身に血液を送り出すポンプである心臓は電気で動いており、右心房の一番上部にある洞結節で発生する電気は右脚・左脚を通ってそれぞれ右心室・左心室に伝わります。

そしてその右脚または左脚の一部の電気の流れが途絶えてしまったのが脚ブロックです。

心室の電気の流れが途絶えると心臓が止まって死んでしまうのではないかと危惧されるかもしれませんが、そんなことは起こりません。

脚と言いますのはあくまで電機の流れる大通りであって周囲の心筋を通じて電機は流れます。

例えば阪神高速が通行止めになったけど、周囲の一般道を通じて交通は保たれているという状況です。

ですので電気の流れに若干の遅延が生じますが実害はないといった状況です。

ですので脚ブロックそのものに実害はないのですが、この脚ブロックがある心疾患の症状である場合がありますので心疾患が隠れていないかを調べる必要があります。そして心疾患の存在が否定的であれば脚ブロックそのものは放置可能です。

 

 

新型コロナ肺炎についての情報は毎日のようにテレビやネットを中心に報じられ、また人づてに伝わる噂も多く真偽不明のもっともらしい情報が氾濫しています。

何が正しくて何が間違っていて何が分かっていないのか、ネットをうまく利用すると正確な情報を得ることができます。

間違った知識や情報で損をしたり人に被害を与えたりといったことを防ぐために、情報は正確なものを選ばなければいけないと考えています。

新型コロナウィルス感染症の正確な情報は日本感染症学会のサイトが上手くまとまっていて分かりやすいと思います。

https://www.kansensho.or.jp/modules/topics/index.php?content_id=31#ronbun

とんでもないデマに困っているのは海外でも同じようです。

CDC(疾病予防対策センター)ではいろんなデマの間違いを指摘しています。

https://www.who.int/emergencies/diseases/novel-coronavirus-2019/advice-for-public/myth-busters

英語ですが平易な文書で書かれていますので辞書を片手に読まれると役に立つと思います。

正しくない情報の拡散をパンデミックならぬインフォデミックと呼ぶんですね。

 

 

 

期外収縮という不整脈には上室性と心室性の2種類があります。

いずれも「ドキン」という強い動機を自覚することがあります。

交感神経の刺激により誘発されることがあり、急に驚いた際に「ドキン」とするのは期外収縮かもしれません。

不整脈一般に言えることですが動悸として感じる自覚症状の強さと治療の必要性は関連が薄く、かなり不愉快に感じる期外収縮でもほとんどの場合は放置可能なものです。

期外収縮自体で有害なことは起こりません。

睡眠不足・精神的ストレス・過労・飲酒・喫煙・カフェインなどの生活環境で誘発されますからこれらの因子を是正するだけで期外収縮は減ります。

一方、心筋症や弁膜症などの器質的心疾患が原因で出現するケースが一部でみられるのも事実ですから、持続する期外収縮の場合は超音波検査などでこういった器質的心疾患がないかをチェックしそれらが否定されれば安心してよいと思います。

現実に動悸自体が精神的ストレスとなり、期外収縮を誘発するケースはよく見られます。

検査を受けて心疾患がないと分かった時点で安心して不整脈そのものが消失することも稀ではありません。

生活環境の是正だけでは動悸が消失せず、それが不愉快で耐え難い場合は薬を服用することもありますが抗不整脈薬よりも睡眠導入剤や精神安定剤が著効するケースも多数です。

全ての抗不整脈薬には崔不整脈作用があります。

不要な抗不整脈薬は服用を控えるべきです。

新型コロナ肺炎のためストレスの多い生活を余儀なくされている影響でしょうか、最近動悸を訴え受診される方が多いような気がします。

動悸の多くは何らかの不整脈が原因なのですが、不整脈のすべてが治療を必要とするわけではありません。

むしろ治療を要する不整脈はごく一部で大多数の不整脈は放置可能なものです。

現実に24時間心電図を解析して24時間で不整脈が1拍も無いという人を私は見たことがありません。

それほど不整脈は誰にでも起こるありふれたものです。

そしてその多くは精神的ストレス・不眠・喫煙・飲酒や過労などの生活環境に大きく影響を受けます。

動悸に対する不安感そのものが精神的ストレスとなりそのため不整脈が悪化するという悪循環はよく見受けられます。

とは言え急いで治療を要する不整脈が一部にあるのも事実で、今後高血圧の話と並行して不整脈についてもお話ししようと思います。

一般に危険な不整脈の特徴は動悸以外の症状があるものです。

特に注意が必要なものは血行動態の異常を疑う症状、例えば「頭から血の気が引くような感じがする」「足が浮腫む」「息切れがする」などの症状がある場合は注意が必要です。

一口に不整脈と言っても多くの種類があります。

このブログで少しづつ分かりやすく解説させて頂きます。

コロナウィルス感染者が急増しておりデルタ株がその原因と言われています。

デルタ株については「水痘(水ぼうそう)並みの感染力」と表現したCDC(米国疾病予防管理センター)の内部資料が公開されたことから一部では水痘と同じように空気感染するようになったと言う風評があるようです。

デルタ株は昨年末にインドで初めて発見されて今年の7月にアメリカのマサチューセッツ州で470名のクラスターを発生ししかもその多くがワクチン接種者であったことから一気に話題になりました。

まだ十分なデータがない状況では多くの誤った情報が流布し不安をあおります。

現在までにデルタ株で分かっていることは

・従来の株が一人の患者から2.5名に感染させていたのに対し、デルタ株は3.5~4.0名の人に感染させており感染力が強い(もっと多いという報告もあります)

・デルタ株の増殖速度が速くヒトの鼻腔粘膜に感染してから従来株の1.5倍の速度で増殖する

・ワクチン接種者での感染が報告されたものの現在の感染者の多くはワクチン未接種者であり、ワクチン接種者では感染・重症化ともに低率である

ということです。

空気感染するという根拠はないようです。

鼻腔粘膜でのウィルス量が多く感染力が強いので

・ワクチン未接種者はできるだけ早くワクチンを受ける

・ワクチン接種した人もマスクを着用する

事が推奨されます。

ある人たちの集団を追跡調査し、二つの事象の関連を調べることを観察研究と言います。

例えばある地域の住民を「塩分摂取量」と「脳卒中発生率」に関して年余にわたり追跡調査し、

「塩分摂取量の多い人ほど脳卒中発生率が高かった」という事実を突き止めることを観察研究と言います。

この場合「塩分摂取量を減らすと脳卒中発生率が低下する」かは不明です。

そこで「塩分制限をした人たち」と「塩分制限をしなかった人たち」について追跡調査します。

そして「塩分摂取をすると脳卒中発生率が低下する」という事実を突き止めることを介入研究と言います。

「塩分制限」という治療で住民に介入するという意味です。

現実に「塩分摂取が多いと血圧は上昇し、塩分摂取を制限すると血圧は低下し脳卒中発生率は低下する」

ことは複数の観察研究・介入研究で証明されています。

1950年代の日本のある地域で実施された調査では日本人一日の塩分摂取量は25グラムにも達していたそうです。

2016年の調査では日本人一日の塩分摂取量は9.9グラムだそうですから大幅に減少しています。

この塩分摂取量減少の大きな要因は冷蔵庫の普及だと言われています。

冷蔵庫の普及により野菜や魚を塩漬けにして保存する必要がなくなり、塩分摂取量が減少したという訳です。

WHO(世界保健機構)では一日塩分摂取量は5グラム未満が推奨されていますから、我々はさらに減塩の必要があることになります。

冷蔵庫のような特効薬を考えているのですがなかなか妙案は浮かびません。

このパンデミック下では多くのことが初体験です。

発熱患者さんの受診を制限するなどということは想像すらしたことがありませんでしたし、国民全員に出来るだけ早くワクチンを接種するなどということも初めての経験です。

ワクチンを開発する会社、ワクチンを購入し自治体に供給する政府、ワクチンを分配・配送する自治体にそれを接種する医療機関。

皆が初めての作業を知恵を絞りながらすすめている状況では、予想と違って上手くいかないことの連続だと思います。

クリニックでこれだけ多くの方に予約をおとりした経験も初めてですし、こんなに多くの方の接種を急ピッチで進めていることも初めてです。

ワクチン供給が滞り、せっかく予約頂いた方に予定通り接種できるのか不安になったときは予約いただいた方々から相当厳しいお叱りを受けるものと覚悟しておりました。

しかしながら実際には多くの方々から、医療機関の苦労をお察しいただき暖かい励ましのお言葉を頂戴する日々です。

この危機的な状況にありながら他人に配慮される方々からは大切なことを教えて頂いたと思います。

上手くいかない時にこそ周囲の方の苦労を思いやる余裕の大切さを学びました。

当院では例年ひと冬(10月21日~1月31日)で約500名の方にインフルエンザワクチンを接種していますが、現在は一カ月に約650名のペースで新型コロナワクチン接種を実施しております。

ご不便をおかけすることも多いと思いますが、寛容なお心でお付き合いをお願い致します。

血圧は常に変動します。

精神的ストレスによるイライラ感・睡眠不足・疼痛・不安・便秘や気温の変動など多くの要因で血圧は急に上昇します。

家庭で血圧を測定し上昇していると、脳卒中などに対する懸念からさらに血圧が上昇し、上昇するとさらに不安になり・・・。

こんな一過性の血圧上昇は珍しいことではありません。

一過性の血圧上昇は一部の例外を除き緊急降圧の対象とはなりません。

多くの場合安静のみで降圧しますから、超短時間に血圧を下げる降圧剤を内服すると過度の降圧を招き脳や心臓の虚血を招きかねないので緊急降圧は禁忌です。

家庭で急な血圧の上昇に気づいた場合は麻痺や頭痛などの症状がない限りまず安静にして気持ちを楽にすることが最善の方法です。