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最近は抗原検査キットが市販され自身で検査が手軽にできるようになりました。

しかしこの抗原検査はその特徴と有用性さらに限界を知って使わないと間違った判断をすることがあります。

抗原検査キットには臨床用(診断用)と明記されているものとそうでない例えば研究用などと記載されているものがあります。

臨床用(診断用)キットとは下記のリンクをご覧いただければ分かりますが厚生労働省が定める基準を満たす精度を持ったもので現在35の製品があります。

https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000858746.pdf

これら以外のものはわかりやすく言えば、厚生労働省の定める基準を満たさない精度の低いものです。

 

PCR検査をはじめとする遺伝子増幅検査はコロナウィルスの数を増幅し検出しやすくする方法で、例えばRTーPCR法は1サーマルサイクルごとにウィルスの量が2倍になります。

一般的に34サーマルサイクル程度の増幅が多いので2の34乗倍すなはち約170億倍にウィルスを増殖させてウィルスを検出します。

一方で抗原検査は鼻腔に存在するウィルスをそのまま検出する検査なので感度はPCR検査に比べて圧倒的に劣ります。

ですので抗原検査では微量のウィルスしか存在しない状況では陽性と判定されません。

現実に抗原検査では陰性だった方がPCR検査では陽性と診断されることは珍しくありません。

PCR検査で陽性の人が抗原検査で陽性と診断される確率はどの程度でしょうか?

臨床用の抗原検査キットの中でも最も感度の高いもののひとつであるクイックナビでは

有症状の場合に89.3%、無症状の場合に67.1%です。

有症状の新型コロナ感染症の場合には鼻腔に既に相当数のウィルスが存在すると考えられます。

(逆に言うとウィルスが多いから症状がある)

こういう場合はPCR検査と比しても89.3%の感度があります。

しかしながら鼻腔に少量のウィルスしか存在しない無症状の場合は感度は67.1%に過ぎません。

 

抗原検査は発症後1日目から9日目の間に用いることが推奨されています。

無症状の場合には感度が低いからです。

すなはち無症状の方に抗原検査をして陰性だからと言ってウィルスがいないということにはなりません。

大きなイベントの前に関係者に抗原検査をして安全を確認するということがよく行われています。

しかしこの方法は上記の理由から危険です。

 

抗原検査は安価で結果が判明するまでの時間が数分程度と短く正しく使えば有用な検査です。

検査はその検査の特徴を知ったうえで用いるようにして下さい。

くれぐれも抗原検査で陰性確認などされないようにして下さい。

 

 

 

私は本を読むことが好きです。

ドキュメンタリー・歴史・政治や経済などいろんなジャンルの本を読みます。

主にブックオフの古本をたくさん買って次に読もうと置いてある本は数え切れません。

昨年読んだ中で最も印象深いのは『21Lessons』(ユヴァル・ノア・ハラリ著)です。

著者はエルサレム・ヘブライ大学の歴史学の教授なのですが過去の歴史から近未来を予想するという内容であまりに鋭い指摘にぞっとしたりします。

非常に示唆に富んで、もしかしたら私が生涯読んだ本の中で最も感銘を受けた本かもしれません。

『スマートフォンに目が釘付けになったまま通りを歩き回るゾンビたちを見たことがあるだろう。あなたは彼らがテクノロジーを支配していると思うだろうか?それともテクノロジーが彼らを支配しているのか?』

『イデオロギーに加えて、営利企業も虚構とフェイクニュースに頼っている。ブランド戦略は人々が真実と信じ込むまで同じ虚構の物語を何度となく語るという手法を取ることが多い。あなたはコカ・コーラについて考えた時どんな画像が頭に思い浮かぶだろうか?若くて健康な人々がスポーツをしながら一緒に楽しんでいるところを思い描くだろうか?あるいは太りすぎの糖尿病患者が病院のベッドに横たわっている姿を想像するだろうか?コカ・コーラをたくさん飲んでも若返れないし、健康になれないし、運動が得意にもなれない。むしろ肥満と糖尿病になる危険が高まる。それにもかかわらずコカ・コーラは長年莫大な資金を投じて自らを若さや健康やスポーツと結び付けてきた。そして何十億という人が潜在意識の中でその結びつきを信じている』

『世の中はますます複雑になっているのに、人々は今起こっていることにいかに無知であるか、気づけていない。その結果、気象学や生物学にろくな知識も持たない人が平気で気候変動や遺伝子組み換え作物についての政策を提案したり、イラクやウクライナを地図で見つけられない人がそうした国で何をするべきかに関して恐ろしく強硬な意見を唱えたりする。人々が自分の無知を正しく認識することはめったにない。なぜなら人々は同じ意見の友人や自分の意見を言裏付けるオンライオン配信のニュースからなる殻に閉じこもっておりそこでは自分の意見が絶えず増幅され正当性を問われることは稀だからだ』

等々、鋭すぎて背筋が凝りそうな指摘の連続です。

高校生の頃に『第三の波』(アルビン・トフラー著)を読んでいたく感動した記憶があります。

2022年の現在から見ればなんて言うことのない内容かもしれませんが、あの当時は情報工学が産業構造を変えるという予想の意味が全く理解できないままワクワク・ゾクゾクしました。

ハラリ氏は『もし何らかの問題が自分にとって格別に重要に思えるのなら、関連した科学文献を読む努力をすることだ。ただし、科学文献といっても専門家の査読を受けた論文や名の知れた学術出版社が刊行した書籍や定評のある大学や機関の教授の著作に限る。』

とも訴えています。

パソコンで何か調べ物をしていると私の気を誘うような期間限定バーゲン品の情報や格闘技のニュースや政治家のスキャンダルなどの無料のニュースが次々にポップアップし私にクリックさせようと躍起です。

そんな罠にはまったら最後1時間も2時間も無駄な時間を奪われた挙句に変な先入観を植え付けられます。

氾濫する情報の中で真実を見つけるには無料の情報には要注意です。

情報は力で、役に立つ情報はお金を支払う価値があるとも思います。

面倒くさがって自分の頭で考えない癖がつかないように気を払い、真偽不明の情報を鵜吞みにしない賢さが今流行りのcritical thinkingなんでしょうね。

当院に設置しております新型コロナウィルスを検出するリアルタイムRT-PCRは島津製作所製 Auto Amp と言い、一度に4検体が測定できますが結果判明に130分程度かかります。

主に唾液を用いて(鼻咽頭粘膜も可能)検査しますが、唾液の性情に影響を与える口腔内の状況により上手く検査ができなかったり偽陰性になったりするそうです。

特に唾液採取直前にカテキンを多く含む緑茶を接種するとカテキンの殺菌作用により偽陰性になるそうです。

ですのでPCRをご希望の方は来院前には緑茶の接種をお控え頂くのが望ましいと思います。

ところで、世界の中で日本だけが新型コロナウィルス流行が沈静化しています。

理由は多くの仮説があるものの証明された根拠のある説はなく、研究者の間でもミステリーと言われているようです。

もしかしたら日本人が多く摂取する緑茶の効果もあるのでしょうか?

そう言えば新型コロナウィルス対策に毎晩アルコールで喉や胃を消毒しているという方がおられました。

効果は・・・?

 

コロナウィルスパンデミックで本当に多くのことを経験し多くのことを学びました。

現在当院で実施している発熱外来は、発熱または上気道炎症状のある方は受診前に予め問診をし階下の別室で診察をする、発熱患者さんを一般の患者さんから完全に隔離するという方法です。

これはもちろん新型コロナ感染症を念頭に置いたものなのですが、どうして今までこのような方式をとらなかったのだろうと自問自答することがあります。

パンデミック前を思い出せば、特に冬の風邪の季節にはどこの医療機関も同じ待合室に糖尿病の方、喘息でステロイドホルモンを服用されている方、膠原病で免疫抑制剤を使用中の方や肺気腫の方が風邪やインフルエンザの方と一緒にお待ちでした。

新型コロナ肺炎を診療するようになって感染対策に配慮するようになった今から考えると、以前はなんと配慮のないことをしていたのかと痛感します。

単なる風邪でも肺気腫の方や免疫機能の抑制されている方は時として致死的になります。

いつかこの新型コロナウィルスパンデミックが終息しても、私は現在の発熱外来という診療方法を継続しようと思います。

ヤフーが中国から撤退するというニュースを耳にしました。

中国や北朝鮮などの共産主義国家ではネットの検閲があるとお聞きしています。

しかし時々日本でも検閲があるのではないかと疑いたくなるくらい検索でヒットしないキーワードがあります。

『t-PA スキャンダル』

がその一つです。

我々医師は各学会発表のガイドラインに沿った形で診療を勧めます。

そしてそのガイドラインは学会で主導的立場にある研究者たちの合議で作成されていました。

t-PAという高額な薬剤がある年に突如として急性心筋梗塞や脳卒中の第一選択薬として推奨されました。

このガイドラインには当時駆け出しの医師だった私にも大きな違和感がありました。

急性心筋梗塞に対してはバルーンを使って血管を拡張させるPTCAという治療が既に根付きつつあったからです。

結局そのガイドラインは大きな議論を呼び、あっという間に改定されました。

そしてガイドライン策定委員会の医師たちに製薬会社から高額の献金がされていたというスキャンダルが発覚しガイドライン作成のありかたそのものを考え直すきっかけになりました。

https://medical.nikkeibp.co.jp/inc/all/hotnews/archives/176990.html

現在でガイドラインは参考にした研究や論文を挙げ、その論文からその治療がどの程度の根拠をもって推奨されるのかという表現形式に変わっています。

また正式に発表される前に原案が公開されパブリックコメントが求められます。

より公平な形で作成されているという訳です。

 

この事件は現在ネットで検索しても本当にヒットせず上記リンクのみが唯一のヒットです。

この事件をヒントに作成された映画がハリソン・フォード主演の「逃亡者」だと言われています。

私より若い世代の医師はおそらくこの出来事を知らない人が多いのではないでしょうか?

新型コロナ肺炎が流行してから本当に多くの申請書を公的機関に提出しています。

クリニックで発熱患者さんを診察するのに申請が必要ですし、コロナの検査をするのに申請が必要です。

さらにワクチン接種やスタッフの慰労金に補助金の申請など数えきれないほどの申請書を記入提出しました。

その最後には大抵「反社会的勢力でないことの宣誓」をする書類があり、オンライン申請の場合には「はい」「いいえ」からどちらかを選ばなければなりません。

例えば

「わたしは反社会的勢力の一員ではありません」

という文章に

「はい」

と答えることになります。

ところで、私は2年ほど前から英会話を習っているのですが、英語と日本語では”YES”と”NO”が全く逆になることがあります。

「わたしは反社会的勢力の一員ではありません」は英語で ”I am not a member of antisocial forces” ですが

答えは

「はい、違います」で英語で ”No, I am not”

となります。

つまり日本語で「はい」、英語で “NO” です。

先日、大阪府感染症対策課から電話があり

「先生は反社会的勢力ですか?」

と聞かれました。

初めは何のことを仰っているのか分からなかったのですが、要するに

「わたしは反社会的勢力の一員ではありません」

という宣誓文に私は

「いいえ」

と答えていたそうです。

私の中途半端な英語力が日本語の邪魔をして大きな誤りを犯してしまったという訳です。

電話で

「私は決してその様な反社会的勢力と関わりもなく、極めて善良な市民で運転免許もゴールドです」

とお答えしたところ、電話の向こうで笑いながら

「了解しました、こちらで訂正しておきますね」

と仰って頂きほっとしました。

 

 

新型コロナ肺炎についての情報は毎日のようにテレビやネットを中心に報じられ、また人づてに伝わる噂も多く真偽不明のもっともらしい情報が氾濫しています。

何が正しくて何が間違っていて何が分かっていないのか、ネットをうまく利用すると正確な情報を得ることができます。

間違った知識や情報で損をしたり人に被害を与えたりといったことを防ぐために、情報は正確なものを選ばなければいけないと考えています。

新型コロナウィルス感染症の正確な情報は日本感染症学会のサイトが上手くまとまっていて分かりやすいと思います。

https://www.kansensho.or.jp/modules/topics/index.php?content_id=31#ronbun

とんでもないデマに困っているのは海外でも同じようです。

CDC(疾病予防対策センター)ではいろんなデマの間違いを指摘しています。

https://www.who.int/emergencies/diseases/novel-coronavirus-2019/advice-for-public/myth-busters

英語ですが平易な文書で書かれていますので辞書を片手に読まれると役に立つと思います。

正しくない情報の拡散をパンデミックならぬインフォデミックと呼ぶんですね。

 

 

 

コロナウィルス感染者が急増しておりデルタ株がその原因と言われています。

デルタ株については「水痘(水ぼうそう)並みの感染力」と表現したCDC(米国疾病予防管理センター)の内部資料が公開されたことから一部では水痘と同じように空気感染するようになったと言う風評があるようです。

デルタ株は昨年末にインドで初めて発見されて今年の7月にアメリカのマサチューセッツ州で470名のクラスターを発生ししかもその多くがワクチン接種者であったことから一気に話題になりました。

まだ十分なデータがない状況では多くの誤った情報が流布し不安をあおります。

現在までにデルタ株で分かっていることは

・従来の株が一人の患者から2.5名に感染させていたのに対し、デルタ株は3.5~4.0名の人に感染させており感染力が強い(もっと多いという報告もあります)

・デルタ株の増殖速度が速くヒトの鼻腔粘膜に感染してから従来株の1.5倍の速度で増殖する

・ワクチン接種者での感染が報告されたものの現在の感染者の多くはワクチン未接種者であり、ワクチン接種者では感染・重症化ともに低率である

ということです。

空気感染するという根拠はないようです。

鼻腔粘膜でのウィルス量が多く感染力が強いので

・ワクチン未接種者はできるだけ早くワクチンを受ける

・ワクチン接種した人もマスクを着用する

事が推奨されます。

このパンデミック下では多くのことが初体験です。

発熱患者さんの受診を制限するなどということは想像すらしたことがありませんでしたし、国民全員に出来るだけ早くワクチンを接種するなどということも初めての経験です。

ワクチンを開発する会社、ワクチンを購入し自治体に供給する政府、ワクチンを分配・配送する自治体にそれを接種する医療機関。

皆が初めての作業を知恵を絞りながらすすめている状況では、予想と違って上手くいかないことの連続だと思います。

クリニックでこれだけ多くの方に予約をおとりした経験も初めてですし、こんなに多くの方の接種を急ピッチで進めていることも初めてです。

ワクチン供給が滞り、せっかく予約頂いた方に予定通り接種できるのか不安になったときは予約いただいた方々から相当厳しいお叱りを受けるものと覚悟しておりました。

しかしながら実際には多くの方々から、医療機関の苦労をお察しいただき暖かい励ましのお言葉を頂戴する日々です。

この危機的な状況にありながら他人に配慮される方々からは大切なことを教えて頂いたと思います。

上手くいかない時にこそ周囲の方の苦労を思いやる余裕の大切さを学びました。

当院では例年ひと冬(10月21日~1月31日)で約500名の方にインフルエンザワクチンを接種していますが、現在は一カ月に約650名のペースで新型コロナワクチン接種を実施しております。

ご不便をおかけすることも多いと思いますが、寛容なお心でお付き合いをお願い致します。

堺中央教会杉貴生牧師様の御計らいでカナダ人宣教師のマイク・ホイヤーさんから英会話を習っています。

バンクーバーに帰国された現在もオンラインでレッスンを受けていますが上達は牛歩の如しです。

英会話上達のコツはミスを恐れずにどんどん喋ることだということでへんてこりんなブロークンイングリッシュを話しますがホイヤーさんはいつも親切にご指導くださり本当に楽しく英会話を学んでいます。

いろんな話題につきディスカッションしますが外国人と日本人の人生観や価値観の違い、あるいは社会に対する認識の違いを実感します。

世界中でボランティア活動に精力的に尽力されている方なのですが、一言でいうと洗練された方です。

社会の中での自分の立場を客観的に理解され、報酬を求めず努力するという日常を送られています。

時として迷いが生じたときに参考になる賢人だと思います。

この出会いに感謝しています。

 

https://hoyers.blogspot.com/

ホイヤーさんのブログです。

世界中でボランティア活動をされた記録が勉強になります。