心不全の話 23 拡張型心筋症
心室の壁が痩せて収縮力が低下し心不全に陥る拡張型心筋症は珍しい病気ではありません
球体の内圧をP、半径をR、壁にかかる張力をTとするとTはPとRの積で表されます
内圧が上昇すると壁にかかる張力は上昇し、また内腔が拡張すると壁にかかる張力は上昇しますので心室壁はその張力に耐えるために壁が肥厚し強度を増します
いずれの場合も壁にかかる張力を低減させる方向すなはち内腔を小さくする言い換えれば半径を小さくする方向に肥大します
これを求心性肥大と呼びます
ですので心拡大は必ず心肥大を伴いますが、心肥大は必ずしも拡大を伴いません
逆に言い換えると拡大しているのに肥大(壁が肥厚)していない心臓があれば、その時点で心筋そのものに異常があるということになります
心臓エコーでは左心室が大きく拡大しているにもかかわらず壁の肥厚がなく、収縮力が低下している場合には心筋疾患です
もちろんこういう病態を呈する疾患は他にも糖尿病心筋症・頻脈誘発心筋症・ウィルス性心筋炎・アミロイドーシスや抗がん剤の副作用など多くありますからそれらを除外する必要があります
拡張型心筋症は一般に発症年齢が若いほど重症で心臓移植の対象にもなる場合があります
診断には心臓超音波が有効です