心不全の話 8 治療の目標

心不全の治療には大きく分けて二つの目標があります。

一つは現在の意症状を和らげることです。

心不全には動悸・呼吸困難感や咳・倦怠感など多彩で辛い症状があります。

そういった苦痛を取り除く短期的な治療目標と、長期的な生命予後を改善するという目標もあります。

どちらも同様に大切なのですが、両方の治療方法が一致しないこともあります。

そして長期予後を改善するという治療には見えない目標に向かって進むというもどかしさもあります。

大規模臨床研究からこの治療が長期予後を改善する、すなはち生存期間を延長するということが証明されている場合でも短期的には特にメリットを実感しないケースも稀ではありません。

また逆に短期的に症状を改善する治療が長期的には予後を悪化させるというケースもあります。

「心不全治療は見えない目標に向かって進む旅のようなものだ」と言った循環器専門の著明な医師がいましたがまさにその通りだと思います。

現在心不全の治療薬には

・ベータ遮断薬

・アンジオテンシン変換酵素阻害薬/アルドステロイン受容体拮抗薬

・抗アルドステロン薬

・SGLT2阻害薬

の4種の柱があります。

後者2剤には著明な利尿作用があり、循環血漿量を減少させるので効果を実感しやすいと思いますが、前者2剤には短期的な効果を実感しにくいという特徴があります。

特にベータ遮断薬は効果が実感しにくく

「何のためにこの薬を飲んでいるのだろう」

と疑問に思われることもあるかもしれません。

心不全治療は継続することこそが大切です。

何のための治療か、本当にこの薬は必要なのか、など疑問に思われることがありましたらなんでもお尋ねください。

治療の目標を共有することが継続には大切です。