心臓病の話 3 拡張型心筋症

心室の内圧をP、

心室の内腔の半径をR、

心室壁にかかる張力をT とすると

T=2PR

という式が成り立ちます

たとえば高血圧などで左心室の内圧が上がるとそれだけ左心室壁にかかる張力は増加しますので増えた張力に対応するため左心室壁は内腔側に心筋を増生し内腔を狭くする心筋肥大(求心性肥大)がおこります

あるいはシャント疾患や弁膜症などで左心室に容量負荷がかかり左心室が広がるとその結果として心室壁にかかる張力が増えますのでその張力に耐えるために心室壁は肥厚し強度を増します

すなはち、拡大は必ず肥大を伴いますが、肥大は必ずしも拡大を伴いません

もし肥大を伴わない拡大があればそれは心筋そのものに異常があると言えます

拡張型心筋症はその例で、左心室の筋肉に異常がおこり収縮力が低下すると拍出量を保つために心室は拡大しますが、拡大したにもかかわらず肥大しません

超音波検査で拡大しているにも関わらず肥大のない左心室を見た場合、その時点で心筋の異常であると結論できます

心筋が収縮力を失う病気の中で頻度が多いのが拡張型心筋症です

現実には拡張型心筋症の原因は不明ですし、心筋症そのものを治す治療も現在のところありませんので心筋生検といったリスクのある検査はしないのが一般的です

拡張型心筋症に類似しした疾患には虚血性心疾患によるもの、心筋炎の後遺症、アミロイドーシスやサルコイドーシスがありますが、アミロイドーシスを除いて特異的な治療法はありませんし心アミロイドーシスの治療も一般に普及している段階ではないので治療は心不全対策になります

この分野は遺伝子レベルの研究が望まれる分野だと思います