新型コロナウィルス感染の第7波が本格化し発熱される方も急増しています。

医療機関が発熱患者様の対応に追われる状況で医療はひっ迫し受診できる医療機関を探すのに苦労される方もおられると思います。

特に日曜・祝日には対応医療機関が少なくなりお困りのことと思います。

大阪府から日曜・祝日の発熱外来につき対応するよう各医療機関に通達があり、各医療機関は不定期に日曜・祝日の発熱外来の実施を予定しています。

日曜・祝日の当日にどこの医療機関が発熱外来を実施しているかは下記のリンクから閲覧できますので参考にして下さい。

https://www.pref.osaka.lg.jp/iryo/osakakansensho/sinryokensa.html

当院が大阪府に届け出ています日曜日・祝日の発熱外来の予定は8月・9月については

8月11日(祝)

8月15日(盆)

9月4日(日)

9月23日(祝)

の9:00~12:00です。

ご利用頂けましたら幸いです。

 

心房細動の合併症で最も恐ろしいのは脳梗塞です。

そして脳梗塞を予防するために抗凝固薬を内服することになります。

抗凝固薬には古くからあるワーファリンとDOACと呼ばれる比較的新しい抗凝固薬があり、メジャーな副作用は両者とも出血です。

薬価はワーファリンが圧倒的に安価なのですが摂取するビタミンKの量により効果が左右され頻回に薬効をチェックしなければならないというデメリットがあります。

多くの臨床研究からDOACの有用性が証明され現在ではDOACが抗凝固薬の主役になっています。

ただこのDOACも腎機能の低下している場合には注意が必要で、定期的な血液検査をしなければなりません。

腎機能は一般に血清クレアチニン値からeGFR値を計算するのですが、目安として(eGFR/10)月に一回の血液検査が望ましいとされています。

例えばeGFRが30の方では、3か月に一度の血液検査が推奨されます。

 

 

少量の飲酒は数時間の血圧低下作用があります。

特に飲酒後入浴すると血圧低下が著明な場合もあります。

しかしながら習慣的な飲酒は逆に血圧上昇につながります。

実は脳出血はアルコール摂取量に比例し増加するのですが、脳梗塞や慢性腎臓病は少量の飲酒はかえってリスクを低下させることが分かっています。

酒は百薬の長ということわざもありますが、ある部分ではその通りです。

高血圧の方の場合にはエタノールで20~30ml/日以下が推奨され、これはおよそ

日本酒1合、ビール中瓶1本、焼酎0.5合、ワイン2杯に相当します。

女性の場合はこの半量が推奨される量です。

10年以上前の話ですが、私が実際に経験したことを紹介したいと思います。

HIV(エイズのウィルス)のスクリーニング検査は感度99.9%、特異度99.9%の優れた検査です。

ある日20歳過ぎの若い女性が健診(たしか献血だったと思います)でHIV陽性を指摘されたと受診されました。

その方は、自分はそんなウィルスに感染するようなことは全く身に覚えがないとのことでした。

そのことを言うと家族から「嘘つき」と言われたと、目に涙を浮かべながら話されました。

 

はたして、この女性は本当に噓をついているのでしょうか?

ところで感度と特異度とは何でしょうか?

感度は「感染者を陽性と判定する確率」で

特異度は「非感染者を陰性と判定する確率」です。

日本におけるHIV陽性者は約10万人にひとりです。

例えば、日本人10万人にHIVのスクリーニング検査をした場合、その10万人にはHIV感染者が1名と非感染者が99,999人含まれます。

その感染者1人は99.9%の確率で陽性ですから0.999人即ちほぼ1人の陽性者がいることになります。

特異度99.9%とは100人の非感染者を99.9%の確率で陰性と判断しますから、言い換えると100人のうち0.1人の偽陽性者がいることになります。

ですので、99,999人のうち0.1%つまり99.9人=約100人の偽陽性者がいることになります。

まとめますと、日本人10万人にHIVスクリーニング検査をすると1名の感染者と100名の非感染者が陽性と判定され、

スクリーニング検査でHIV陽性と判断された場合100/101の確率で偽陽性です。

 

その女性は2次精密検査でHIVに感染していないことが証明されました。

これは正しい知識を持たず、先入観だけで物事を判断したために重大な人権侵害を犯した例です。

似たようなことはコロナウィルスパンデミックでもありました。

 

 

 

内科学会で面白い問題がありましたのでご紹介いたします。

「ある新薬Aが発売されました。

この薬を内服すると2年後には認知症の発症率が既存薬に比して33%減少し0.1%になりました」

さて、あなたはこの薬を飲みますか?

 

認知症の発症が33%も減るのだから飲みたい、と多くの方は思われるかも知れません。

似たような広告は巷には氾濫しています。

 

さて、この新薬Aの効果につき詳しく考えてみましょう。

33%減少し0.1%になったということは既存薬では発症率が0.15%であったということです。

すなはち既存の治療薬では100人に0.15人、言い換えれば10,000人に15人が発症していたのが、

新薬Aでは100人に0.1人、言い換えれば10,000人に10人に減ったという意味ですから

10,000人の方が新薬Aを服用し5人の方が発症を抑えられたということです。

つまり1人の発症抑制効果を得るのに2,000人の人がこの新薬Aを飲む必要があるというわけです。

もっと言うならば2,000人の服用者のうち1,999人はこの薬の恩恵はないという意味になります。

一人の効果を得るために何人がその薬を飲む必要があるのかというのを

NNT(number needed to treat)と言います。

この新薬Aの場合はNNT=2,000ということになりますね。

 

さて、あなたはこの薬を飲みますか?

 

大規模臨床研究によると冬場の血圧は夏に比べて6.7/7.2mmHg高値であり、1月中旬~2月下旬にかけて最も高くなることが知られています。

意外なことに、これは外気温が最も低下する時期より2~3週間早いことになります。

気温の絶対値よりむしろ気温の変動が影響しているのでしょうか?

これらの変化は高齢者・男性で顕著であることも分かっています。

また夏場の血圧低下が大きい人(高変動群)や夏場にかえって血圧の上昇する人(逆転群)では脳心血管疾患のリスクが高く、血圧の季節変動を抑える必要性が示唆されます。

 

心房細動の治療には大きく分けてリズムコントロールとレートコントロールがあります。

心房細動そのものを停止させて規則正しい脈にするリズムコントロールはわかりやすいと思うのですが、どうして心拍数をコントロールして頻脈にならないようにすることが心房細動の治療になるのでしょうか?

心臓から全身に血液を送り出す最も大きなかつ最も重要なポンプは左心室です。

左心房から左心室に送り込まれた血液は左心室の収縮により全身に送り出されるのですが、その左心室に血液を送り込むポンプが左心房です。

そして左心房から左心室に血液が送り込まれる時相が拡張期です。

例えば脈拍が60/分の時は一回の心拍は1秒ですが、120/分になると一回の心拍は0.5秒となり拡張期の時間が短くなります。

心房細動によって心房の収縮が無くなり左心房から左心室へ血液を送り込む力が減っているときに拡張期が短くなり左心室に十分な血液が流入しなくなると結果的に左心室から送り出される血液が減少し心不全を起こすことになります。

ですので心房細動は頻脈を伴うとそれだけで心不全になります。

ですから心房細動の場合は頻脈にならないように心拍数をコントロールすることが大切なのです。

心房細動の治療は

・リズムコントロール:心房細動を止めてしまい規則正しい脈にする

・レートコントロール:心房細動はそのままで脈拍をコントロールし心不全を予防する

の二つに分かれます。

リズムコントロールはアブレーションと言われるカテーテル治療で心房細動そのものを止める方法です。

数日の入院が必要ですが心房細動の不愉快な動機から解放され、場合によっては抗凝固薬が不要になります。

一方レートコントロールは心房細動そのものはそのままにして頻脈にならないよう脈拍をコントロールする治療で抗凝固薬を併用します。

動悸などの自覚症状が無い方はこの治療のほうが手軽なのですが、最近の臨床研究で長期予後はアブレーションの方が優れていることが徐々に分かってきています。

また最近では左心房の中でも特に血栓の好発する左心耳をウォッチマンというデバイスで閉鎖する左心耳閉鎖術が新しい選択肢として注目を浴びています。

この左心耳閉鎖術は併存疾患のため抗凝固薬が使用しにくい場合が適応です。

どの方法を選択するかについて、どちらのみが正解ということはなくて自分に合ったものを選べばよいのですが、最近の大規模な臨床研究の積み重ねからはクライオバルーンという冷凍焼却によるアブレーションが最も予後が良いことが示唆されています。

 

 

特に季節の変わり目には血圧が大きく変動し、測定した血圧値に驚いてしまうこともよくあります。

それまで治療により正常の血圧を維持していたのに、急に180/以上に上昇し慌てふためくということもあると思います。

実は随分以前はそんな時には短時間作用型の降圧薬を内服や舌下投与し血圧を緊急に下げるということが行われていました。

しかし、現在ではそういう急速な高圧は脳や心臓などの虚血を誘発するとして、禁忌とされています。

一過性血圧上昇で進行性臓器障害がみられない場合は褐色細胞腫という特殊なケースを除いて緊急高圧の対象とはなりません。

一過性血圧上昇の一部には精神的要因の関与が示唆されており、パニック障害や過換気でも同様の症状がみられます。

こういう場合には気持ちを落ち着け身体を楽にして安静を保ったのちに再測定するのが推奨されます。

血圧上昇時に降圧剤の追加をすることは十分注意が必要です。

 

心房細動の最も恐ろしい合併症は何といっても血栓症とくに脳梗塞です。

心房内では血液が澱み血栓が形成され、それが血流にのって脳の血管に詰まると脳梗塞になりますので、この合併症だけは何としても予防しなければいけません。

血栓予防には抗凝固薬と言われる、血液を固まりにくくする薬を内服します。

当然出血の副作用がありますから、有益性が副作用を上回ると考えられる場合にのみ勧められます。

どういった方がこの抗凝固薬を内服するのかはCHADS2スコアで判断します。

CHADS2スコアとは

・Congestive heart failure:うっ血性心不全 1点

・Hypertension:高血圧 1点

・Age:75歳以上 1点

・Diabetes Mellitus:糖尿病 1点

・Stroke:脳梗塞の既往 2点

の5項目、6点満点で点数をつけ1点以上の方は抗凝固薬の内服が推奨されます。

また点数により推奨される薬剤に若干の差があります。

心房細動と診断されてもCHADS2スコアが」0点の場合には経過を見てよいということになります。