私は金の聴診器を持っています。
どうやってこの金の聴診器を手に入れたかお聞きください。
私が奈良県立医大第一内科に在籍していたもう30年以上前の話です。
当時、附属病院と研究棟は別棟でその間は数十メートル離れていました。
その間を歩いて移動するのですが、途中に小さな池がありました。
ある日その池のほとりを歩いていた時のことです。
不注意にも白衣のポケットに入れていた聴診器を池に落としてしまったのです。
「しまった」と思いながら池の中を覗き込んでいましたら、池の中から白いドレスに身を包んだ女神の様な女性が現れました。
その女性は私に
「あなたの落とした聴診器はこの鉄の聴診器?この銀の聴診器?あるいはこの金の聴診器?」
と尋ねました。
「私が落としたのはアルミの聴診器です」
と答えますと、その女性は一瞬ムッとした面倒くさそうな表情になりましたが、すぐに気を取り直して
「あなたは正直なドクターです。ご褒美にこの金の聴診器を差し上げましょう」
とこの金の聴診器をくれました。
世の中には不思議なことがあるものです。
(2021年4月1日)