高血圧の原因の多くは本態性高血圧と呼ばれる原因不明のものです。

本態性高血圧の原因については諸説あるものの体質的因子と生活環境が相まって発症すると考えられています。

しかし見逃されがちな高血圧に原発性アルドステロン症があります。

高血圧全体の3~10%を占めますので決して稀な高血圧ではありません。

副腎から分泌されるアルドステロンが異常に増加し血圧を上昇させるだけでなく、全身の血管に直接ダメージを与え若い年齢で脳卒中をおこしたり糖尿病を合併しますので適切な治療をしないと大きな後遺症を残したりします。

原発性アルドステロン症の診断は血液検査や超音波検査などを併せて行います。

原発性アルドステロン症を治療する薬はありますので診断が適切にされれば大きな合併症を予防することが可能です。

他にも二次性高血圧と言われる本態性高血圧以外の高血圧は多数存在し、それぞれに適した治療薬があります。

高血圧と診断された方は自分の高血圧の原因が何なのかを十分理解してください。

 

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意外に思われるかもしれませんが、高血圧の基準は国によって違います。

アメリカでの高血圧の基準は診察室での血圧が、上(収縮期血圧)が130以上または下(拡張期血圧)が80以上の場合です。

一方日本の基準は診察室での血圧が上が140以上または下が90以上ですから、アメリカよりは若干緩やかな基準です。

家庭で測定した場合はそれぞれ5を引き、上が135以上または下が85以上です。

高血圧を治療するのは放置すると脳卒中などを発症するからなのですが、140以下であればそのリスクは全くないのかというとそうではなくて120を超えるとリスクは段階的に増加します。すなはち、120の人より130の人は脳卒中のリスクは高く、130の人より140の人の方は脳卒中のリスクは高いということになります。

ですので、120/80以下を正常血圧と呼び理想的な血圧と考えています。家庭で測定した場合は115/75です。

アメリカと日本で高血圧の基準が違うのは、脳卒中などの予防に対する介入意欲の差と言えます。

家庭で測定した血圧が110であった場合、決して下がり過ぎではありませんので安心してください。

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学会の専門医制度が始まったのは私が奈良県立医科大学を卒業する昭和62年の少し前だったと思います。

現在は専門医を取得することが医師になってからの必須の研修コースで、専門医資格がないと日常業務に支障をきたすこともあります。

しかし当時は専門医資格を取得することの意味合いも不明確で、特になくても困らないものでしたから取得しない医師も珍しくありませんでした。

私の場合は当時の奈良県立医科大学第一内科の同僚が受験するので卒後5年目に一緒に受験し認定医の資格を取得しました。

順序としては内科認定医→総合内科専門医または各領域の専門医(例えば循環器専門医)と受験資格ができ取得する流れになります。

内科認定医資格を取得した翌年に学位を取得した私は専門医資格の取得をせずに医局から派遣された病院で勤務をしていましたが、そろそろ循環器専門医も取得しないとと考え平成11年に必要書類を提出し受験しました。

もちろん初めの受験で当時は過去の問題集などありませんでしたが、どうせ毎日している仕事のことなので簡単だろうと何の準備もせず試験会場に入りましたが、いざ試験が開始し配られた問題を見て驚きました。

冷静に考えれば当たり前のことなのですが循環器専門医試験は循環器内科医と心臓血管外科医が受験する試験です。

試験問題は一定の割合で外科の内容だったのです。

循環器内科の試験だと勘違いしていた私は本当に焦りましたし、もしかしたら不合格かも知れないとも思いました。

答えられる問題だけを答えました。

結果的には合格していたのですが、終わった時には思わず

『参った!』

と独り言を言ったほどです。

現在は専門医資格が医師の経歴を測る目安として定着していますし、ほとんどの医師がそれを取得します。

逆に私が先に取得した学位は現在はあまり重視されなくなってきており、欲しいけどなくても困らないという印象です。

学位については、『足の裏についた米粒』と表現する方がおられました。

取れないと気持ち悪いけど取ったからと言って食えない、という意味だそうです。

昭和のころは臨床と同じくらい研究に重きを置いていましたが、医師のキャリアについての考え方も大きく変わりました。

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『高血圧って貧血の逆ですか?』

とよく質問を受けます。

貧血は血液の赤血球の濃度で、どれだけ血が濃いかを示します。

一方血圧とは血管の中の血液の圧力です。

風船に例えるとしぼんだ風船は圧力(血圧)が低く、パンパンに張った風船は高血圧ということになります。

圧力が高くなりすぎると血管が破れて脳出血になります。

また、風船と違って人間の血管は生きていますから圧力に対抗して血管の壁の強度を増そうと血管壁の肥厚が起こります。

少し難しい話になりますが、

血管の壁にかかる張力をT

血管の太さをR

血圧をP とすると、

T=P×R という計算式が成り立ちます。

すなわち血管系が小さいほど血管壁にかかる張力は小さくなりますから、生体の反応として血管壁の肥厚は内腔を小さくするような肥厚が起こります。

これを求心性肥厚といいます。

つまり血圧が高いとそれだけで血管の中は狭くなっていき、血管が詰まって梗塞をおこすということになります。

高血圧は殆どの場合無症状で健診などの偶然の機会に発見されますが、症状がないからと言って放置すると大変なことになりますから血圧の異常を指摘されたら専門医を受診し相談して下さい。

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このブログでは高血圧やコレステロールなどの当院で治療することの特に多い疾患を取り上げ紹介したいと思います。

まずは高血圧についてご紹介したいのですが、一口に高血圧といっても種々の疾患を含み治療法もさまざまで、血圧が140を超えたから薬を飲んでおけばいいや、などと軽く考えると大きなしっぺ返しを食らうことになります。

高血圧は頻度の高い言わばありふれた病気です。

高血圧の多くは健診などの機会に偶然発見されることが多く自覚症状がないケースがほとんどなのですが、放置すれば様々な合併症を発症します。

主なものでは脳卒中(脳梗塞・脳出血)、冠動脈疾患(狭心症・心筋梗塞)、慢性腎不全、認知症でいずれも人生を大きく左右するものばかりです。

そしてそれらは治療をすることで発症を未然に防ぐことができます。

収縮期血圧10mmHg または拡張期血圧5mmHgの低下により脳卒中のリスクは41%低下し、冠動脈疾患のリスクは22%低下します。

何かの機会に高血圧を指摘されたら放置せずにぜひ専門医にご相談ください。

単に薬を処方してもらうといったことではなく、人生に大きく影響するような内容のあるお話をお聞きできると思います。

 

Hypertension

受診の際に最も心配なことの一つがコロナウィルス対策だと思います。

当院では、

  • 待合室の椅子をパーテーションで仕切る
  • 使い捨て紙タオル
  • 蛇口は全てタッチレスセンサー式
  • タッチレスセンサー式エタノール消毒液

など様々な対策をしており、発熱や呼吸器症状のある方は別室にて診察することにしております。

また、受診までの時間を駐車場の自家用車内で待ちたい方は受付後に順番がきましたら携帯電話にご連絡することもしております。

当院を受診された方を病院に紹介し、コロナウィルス感染が判明した事例もありましたが、保健所の調査では濃厚接触者なしと判定され、院内感染もありませんでした。

 

クリニックのホームページを一新するのを機会にブログを始めることにしました。
必ずしも医療に関することばかりではなく、医療に関しない個人的な趣味などもとり混ぜて発信したいと考えております。
医療に関することは既に一般にコンセンサスを得ている事項ばかりでなく個人的な意見もご紹介出ればとも思います。
宜しくお願い致します。

院長 神元章雄