糸球体という血液を濾すろ紙に過剰なろ過を強いるとろ紙が目詰まりを起こして腎機能が低下するという説はブレナーという医学者により提唱されハイパーフィルトレーションセオリーと呼ばれます。

私が研修医の頃にブレナーの講演をビデオで見たことがあります。

もちろん英語での講演なのですが、医局の先輩方は話を聞きながらウンウンとうなづきながら感心して聞いておられ、その横で英語力のない私は分かったふりをしながらうなづいていました。

内容は後日日本語に翻訳された内容を読んで理解したという情けない思い出ですが、今日でもこのセオリーは腎機能を保護するうえで基礎となるものです。

糸球体過ろ過を抑制する代表的な薬剤はアルドステロン受容体拮抗薬ですが、実は最近糖尿病の治療薬であるSGLT2阻害薬にも腎機能保護の作用があることが大規模臨床研究から証明され臨床にも利用されています。

しかし、開始時に一過性の腎機能低下がありますので処方には注意が必要です。

昨今ではいろんな薬剤の効能は大規模臨床研究により判明し臨床応用されることが殆どなのですが、本当はなぜその薬剤がその効果を持つのかを解明するべきと私は思うのですが現実にはそうではありません。

その薬剤の作用機序を十分解明することが後手に回っていることが残念です。

 

腎臓の糸球体は血液を濾して尿を作るろ紙のような構造なのですが、過剰なろ過を続けるとろ紙が目詰まりをおこしてしまい、いったん目詰まりをおこした糸球体は回復しません。

目詰まりをおこして機能を失った糸球体が現れると、ほかの糸球体にその分の負担がかかり過ろ過になりその糸球体も目詰まりをおこし・・・、といった具合に糸球体は徐々に減っていきます。

ですので、腎機能低下が危惧されるケースでは早期から糸球体濾過を下げる工夫が必要です。

糸球体の過ろ過を下げる方法はいくつかありますが、一つは糸球体の輸入細動脈を収縮させ輸出細動脈を拡張させることによって糸球体の濾過圧を下げる方法です。

こういう作用を持った降圧剤がアンジオテンシン変換酵素阻害薬またはアルドステロン受容体拮抗薬です。

糖尿病の方で蛋白尿も見られないが血液検査をすると糸球体濾過率が正常を大きく上回る方がおられます。

正常を上回るのだから良いのかというとそうではなく、この状況が継続するといずれ腎機能が低下してきます。

こういう段階から腎機能を守る工夫をしておかないと手遅れになることになります。

 

 

収縮機能が正常な心不全には、拡張機能障害による心不全以外にも存在します。

脈が速すぎる場合、脈が遅すぎる場合、ホルモンの異常で体液バランスが崩れる場合など決して稀ではありません。

特に脈拍の早い心房細動は要注意です。

心電図中の鋭く高い波はQRS波と呼ばれますが、心室が収縮し血液を送り出す時相です。

このQRSの幅(収縮期)は脈拍によって変化しませんから脈拍が多くなると相対的に拡張期の時相が短くなります。

心房細動では左心房の収縮が無くなり心室に血液を押し込む力が無くなりますので、心室への流入が減ります。

左心室へ血液を押し込む力が失われているうえに、拡張期の時間が短くなると心室に十分の血液が流入しにくくなります。

ですので心房細動では心室の収縮能が正常でも、脈が速くなるとそれだけで心不全を起こしうります。

特に左心室への流入障害のある場合、僧帽弁狭窄症や心室肥大などでは頻脈には要注意です。

 

大動脈は左心室から出る太さ2~3cmもあるゴムホースのような血管です。

その中の圧力はご存じのように上腕で測定する血圧と同じで120mmHg 程度です。

mmHgというのは水銀をどの程度の高さまで押し上げるかという意味ですが、水銀の比重は13.6ですので120mmHgは水柱で換算すると1,632mmH2Oになりますので120mmHgの血圧の動脈を針で刺して穴をあけると1m63cmの高さまで血液が噴き出すことになります。

凄い圧力ですね。

腎臓は大動脈から数cmしか離れていないのに分岐を繰り返し糸球体という極めて細い血管になります。

糸球体はひとつが0.1~0.2mmの大きさの細い血管の塊で片方の腎臓に約100万個存在します。

大動脈→腎動脈→葉間動脈→弓状動脈→輸入細動脈→糸球体→輸出細動脈と分岐を繰り返し糸球体に血液を供給しますが、

大動脈の圧力を120mmHgとすると、輸入細動脈は70~80mmHg、輸出細動脈は20~30mmHg前後ですので、即ち糸球体の血管にかかる圧力は50mmHgということになります。

0.1mmの細い血管の塊にこんなに高い圧力がかかっているとは驚きですね。

 

 

 

今年もクリニックのつつじがきれいに咲き始めました。

毎年このつつじを見ると、つつじが崎といわれる館に住んだ戦国武将の武田信玄を連想します。

「人は石垣、人は城。人は城なり、城は人なり」

は有名な信玄の言葉ですが、その言葉通り武田信玄には有能な家臣がたくさんいたことが知られています。

裏切り・謀略が当たり前の時代に、戦が終わる度に信玄が真っ先にしたことは合戦に参加した家臣への手紙を書くことだったそうです。

百円札(古い!)でお馴染みの板垣退助は武田家臣板垣信方の子孫です。

真田幸村は二度も大河ドラマになりましたね。

今年こそ九度山を訪れてみたいと思っているのですが。

 

 

 

高血圧治療の目的は脳卒中・動脈硬化症や腎不全といった臓器障害を未然に防ぐためです。

ですので単に血圧を下げること以外にも、守るべき臓器によって降圧剤の選択は異なります。

全ての高血圧は同じ薬でOKというわけにはいきません。

腎臓に不安のある場合は全身血圧のコントロール以外に糸球体ろ過圧に対する配慮が不可欠です。

 

腎臓は糸球体という小さな濾紙で血液をろ過して尿を作る臓器で、一つの腎臓には約100万個の糸球体があります。

糸球体には輸入動脈から血液が流れ込み、輸出動脈から血液が出ていきますので輸入動脈と輸出動脈の圧の差がろ紙にかかる圧でその圧が高いほど多くろ過されます。

 

腎障害は一旦発症すると徐々に進行する運命にあります。

これはどういうことでしょう?

腎障害というのは多くの場合糸球体の障害で、糸球体のろ紙が目詰まりを起こしていることに例えられます。

例えば100万個の糸球体のうち1万個が目詰まりをおこすと、残りの99万個の糸球体でそれまでと同じ仕事をこなさなくてはなりません。

すなはち腎障害が少しでもおこれば残りの糸球体にしわ寄せがかかり、残った一つ一つの糸球体はそれまでより多くのろ過をしなければならなくなります。

Hyperfiltration Theory という有名な説があり、残った糸球体が過ろ過を続ければその糸球体のろ紙も目詰まりをおこしてしまうという説です。

ですので一旦糸球体障害が起これば残りの糸球体に過ろ過がおこり、次々に糸球体が目詰まりをおこして腎障害が進行していくというわけです。

1万個の糸球体の障害の場合には残った糸球体の仕事は約1%しか増えませんが、50万個の糸球体が障害を受けた場合には残った糸球体の仕事量は倍になります。

ですので、腎障害は進行すれば進行するほど進行する速度が速くなります。

 

 

 

 

 

左心室の機能を測る上で大切なのが拡張機能です。

収縮機能は左心室がポンプとしてどの程度血液を駆出する力があるかを測る、いわばポンプとしての能力です。

一方、拡張機能は左心房から左心室への血液の流入のしやすさです。

左心室への血液の流入は

・拡張早期

・心房収縮期

の二相に分かれます。

収縮を終えたばかりの左心室が自然に拡張する時点で左心房ー左心室間の僧帽弁が開き血液が流入します(拡張早期)。

そして、左心房から左心室への血液の流入が終わったころに、左心房が収縮しさらに左心室に血液を押し込みます(心房収縮期)。

一般には流量は

拡張早期>心房収縮期

ですが、左心室が硬くなり広がりにくくなると

拡張早期<心房収縮期

となります。

これは超音波検査で簡単に調べることができます。

この左心室の拡張機能障害は、高血圧や心筋症あるいは大動脈弁狭窄症のために左心室の筋肉が肥厚した状況などでみられます。

収縮機能の維持された心不全(HFpEF:ヘフペフ)はこういう状態で、分かりやすく言うと左心室に血液が流入しにくくなってその手前の肺に血液が渋滞を起こしている(肺うっ血)ことです。

「拡張機能障害による肺うっ血」と呼べば分かりやすいと思うのですが、なぜが学会では「収縮機能の正常な心不全」と呼ばれます。

 

 

心臓には左心室・右心室・左心房・右心房と4個のポンプがありますがその中で左心室は全身に血液を送り出す役割を持った最大のポンプです。

例えば慎重170センチの方が立っている時に血液は左心室から両足まで送られ、さらに100センチ以上のの高さを登って心臓まで帰ってくるのも左心室の力です。

凄い力ですね。

ですので心機能の測定は一般に左心室の機能を指します。

左心室が最大に拡張したときに100mlの容量があり、収縮末期に内宮が40mlだとしたら一回の収縮で60mlの血液を送り出したことになりますので、左室駆出分画は60%ということになります。

左心室の筋肉が劣化しこの駆出分画が例えば40%になると心不全ということになります。

全身が必要とする血液を供給できなくなりますから、疲労感・息切れ・ふらつきなどの症状がみられるようになります。

また左心室の手前で血液が渋滞を起こしうっ血が起こるので肺に水がたまったり足がむくんだりします。

これが「左室駆出分画の低下した心不全」でHFrEF(Heart Failure reduced Ejection Fraction)と省略され「ヘフレフ」と呼ばれたりします。

原因疾患としては拡張型心筋症・心筋梗塞・心筋炎などがあります。

 

読書が好きで多くの本を読みます。

主に古本をたくさん買って時間のある時に読みますが、読み始めて期待外れだなと止めてしまうこともよくあります。

現在読んでいる「いいね戦争」は久しぶりに巡り合った名著です。

インターネットを用いて多くの政治家や指導者たちが民意をコントロールしようとしているかについて書かれています。

チュニジアのジャスミン革命で始まったアラブの春は当初、主張に多くの「いいね」を獲得したネットユーザーたちが現実の世界で団結し革命を起こしたものですが、その後ネットの力に気づいた為政者たちが逆にネットを用いて民意をコントロールし政権を維持するという事態になっているそうで、最も成功しているのは中国とロシアだそうです。

特にロシアはアメリカの大統領選挙にまで影響したと考察しています。

結局のところ多くの国で政府はネットを用いて国民をコントロールしており、その多くが「ボット」と呼ばれるプログラムによるものだそうです。

そう言えば、アマゾンで買い物をするときの評価に、ほとんど同じ文章が繰り返し登場したり、不自然な日本語が多いのも外国のボットなんでしょうか?

ネットの世界では殆どのものを疑わなくてはならないのかもしれません。

ふと、そんなことを考えていました。

 

 

心不全は一般の方が想像しているよりずっと頻度の高い病気でずっと恐ろしい病気です。

一旦心不全と診断された方の予後はがん患者の予後に劣ります。

もちろん原因が何かによるのですが、一つの分類方法に左室駆出分画があります。

左室駆出分画(EF:Ejection Fraction)とは左心室が拡張したときの何パーセントを心臓から送り出すかの割合です。

左心室が拡張期に100mlの容量があり、収縮によりそのうち60mlを心臓から拍出したら左室駆出分画は60%という意味になります。

一般に50%以上が正常とされていますが、心不全の場合この左室駆出分画が低下している場合が多く、その数字によって左心室の収縮能が推定されます。

左室駆出分画が低下するとそれだけ心臓のポンプとしての機能が低下し全身に必要な血液を送り出せなくなります。

倦怠感やふらつき、四肢冷感に呼吸困難感が代表的な症状です。

この左室駆出分画は超音波検査で簡単に調べるとこが可能です。