高血圧の話 41 糸球体過ろ過 1

高血圧治療の目的は脳卒中・動脈硬化症や腎不全といった臓器障害を未然に防ぐためです。

ですので単に血圧を下げること以外にも、守るべき臓器によって降圧剤の選択は異なります。

全ての高血圧は同じ薬でOKというわけにはいきません。

腎臓に不安のある場合は全身血圧のコントロール以外に糸球体ろ過圧に対する配慮が不可欠です。

 

腎臓は糸球体という小さな濾紙で血液をろ過して尿を作る臓器で、一つの腎臓には約100万個の糸球体があります。

糸球体には輸入動脈から血液が流れ込み、輸出動脈から血液が出ていきますので輸入動脈と輸出動脈の圧の差がろ紙にかかる圧でその圧が高いほど多くろ過されます。

 

腎障害は一旦発症すると徐々に進行する運命にあります。

これはどういうことでしょう?

腎障害というのは多くの場合糸球体の障害で、糸球体のろ紙が目詰まりを起こしていることに例えられます。

例えば100万個の糸球体のうち1万個が目詰まりをおこすと、残りの99万個の糸球体でそれまでと同じ仕事をこなさなくてはなりません。

すなはち腎障害が少しでもおこれば残りの糸球体にしわ寄せがかかり、残った一つ一つの糸球体はそれまでより多くのろ過をしなければならなくなります。

Hyperfiltration Theory という有名な説があり、残った糸球体が過ろ過を続ければその糸球体のろ紙も目詰まりをおこしてしまうという説です。

ですので一旦糸球体障害が起これば残りの糸球体に過ろ過がおこり、次々に糸球体が目詰まりをおこして腎障害が進行していくというわけです。

1万個の糸球体の障害の場合には残った糸球体の仕事は約1%しか増えませんが、50万個の糸球体が障害を受けた場合には残った糸球体の仕事量は倍になります。

ですので、腎障害は進行すれば進行するほど進行する速度が速くなります。